離婚後の持ち家をめぐる混乱を回避!住宅ローン付き不動産の分与術

住宅ローンが残る家を持つ夫婦にとって、離婚は複雑な問題になりがちです。名義はどうする? ローンの連帯保証人は? 売却するか、どちらかが住み続けるか——判断材料は多岐にわたります。

本記事では、そんな不安を解消するため、ローンが残る家の財産分与方法をケース別に整理し、トラブル回避のポイントをまとめました。

この記事の監修者

リスタート株式会社 代表取締役 峯元 竜

建設業個人事業主を7年経営後、不動産業を12年間経験。2017年の独立開業後、事業の負債を抱えながら働きつつ 副業を掛け持ちしていた経験をもとに、依頼者目線で課題解決に取り組む。

任意売却やリースバックを通じて、一人でも多くの依頼者が安心して新しい生活をスタートできるよう支援。また独自のネットワークを活かし、複雑な金融機関との交渉や、迅速な売却サポートにも強みを持つ。

財産分与前に確認するべき4つのポイント

離婚時の財産分与では、家に関する情報を正確に把握することが大切です。特に、家の名義やローンの状況を確認しないまま話を進めると、後で思わぬトラブルが起こる可能性があります。スムーズに手続きを進めるために、押さえておきたい4つのポイントを紹介します。

1. 家の名義人


まず確認すべきは、家の名義が誰になっているかです。登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すれば、名義人だけでなく、抵当権の有無も分かります。不動産が担保に入っている場合、売却時に金融機関の承認が必要になるため、事前のチェックが重要です。

また、名義人と住宅ローンの契約者が一致しているとは限らない点にも注意が必要です。たとえば、夫がローンを組み、妻を名義人にしているケースでは、ローンの支払い義務は夫にある一方で、不動産の所有権は妻にあります。こうした状況では、分与の方法を慎重に検討しなければなりません。

2. 住宅ローンの契約形態(債務者・連帯債務者・連帯保証人など)

住宅ローンの契約形態によって、離婚後の返済義務が異なります。主な契約形態は以下の3種類です。

  • 単独債務:一人が借り入れを行い、返済義務を負う
  • 連帯保証:主債務者が返済できなくなった場合、連帯保証人が代わりに支払う義務を負う
  • ペアローン(連帯債務):夫婦それぞれが債務者となり、双方に返済義務が生じる

離婚しても、連帯保証人や連帯債務者が自動的に外れるわけではありません。特に連帯保証人として残る場合、主債務者が支払えなくなったときに代わりに返済しなければならないリスクがあります。契約内容を金銭消費貸借契約書で確認し、必要に応じて金融機関と協議することが重要です。

3. 家のローン残債

家の価値とローン残高の関係を把握しておくことも欠かせません。ローンの残高は金融機関の窓口やインターネットバンキングで確認できますが、家をどう分与するかを考える前に、まずは残債がどの程度残っているかを調べる必要があります。

特に家の「時価よりローンが少ない(アンダーローン)」か「時価よりローンが多い(オーバーローン)」かによって、分与の方法や売却の可否が変わります。詳細は後述の「家を売却して分配する場合」で説明しますが、どちらに該当するかを最初に確認しておくとよいでしょう。

4. 家の金銭的価値(時価)

家の現在の市場価値を知ることは、財産分与の判断材料として非常に重要です。不動産会社に査定を依頼すれば、おおよその価格を把握できます。

査定を依頼する際は、複数の不動産会社に相談することをおすすめします。一社だけでは適正な相場が分かりにくく、複数の査定を比較することで、より正確な金額を見極めやすくなります。

また、不動産市場の状況によっては、売却のタイミングが分与の結果に大きく影響することがあります。現在の相場を確認しながら、最適な方法を検討しましょう。

家を売却して分配する場合

財産分与の方法として、家を売却し、その売却代金を分配する方法があります。住宅ローンの残債と家の時価の関係によって手続きの流れや注意点が異なるため、ここでは「アンダーローン」と「オーバーローン」の2つの場合を分けて説明します。

アンダーローンの場合

住宅ローンの残債より家の時価が高い場合は、売却代金でローンを完済し、残った金額を夫婦で分配できます。比較的シンプルなケースといえます。

家を売却する際は、不動産会社に買い手を探してもらう「仲介売却」と、不動産会社が直接買い取る「買取売却」のどちらを選ぶかがポイントです。

  • 仲介売却:市場価格に近い金額で売れる可能性がありますが、買い手が見つかるまで時間がかかる場合があります。
  • 買取売却:短期間で売却できる一方、市場価格より低い金額での売却になる傾向があります。

いずれを選ぶかは、家をできるだけ高く売りたいのか、早く現金化したいのかといった状況や希望を考慮して判断します。

オーバーローンの場合

住宅ローンの残債が家の時価を上回る場合、売却額だけではローンを完済できないため、差額を自己資金や追加のローンで補う必要があります。補えない場合は、金融機関と交渉して「任意売却」を検討するケースもあります。

  • 任意売却:金融機関の同意を得たうえで、市場価格に近い金額で家を売却する方法です。ただし、信用情報に影響が出る可能性や、金融機関との交渉に時間がかかるといったデメリットもあります。

どの方法をとるにしても、オーバーローンの場合は金融機関との協議が不可欠です。早めに相談することで、返済計画の見直しや条件変更など、さまざまな選択肢を検討できます。

売却にあたって夫婦双方が確認すべき事項

家を売却する際は、以下の点を夫婦間であらかじめ話し合っておくとスムーズに進みます。

  1. 住宅ローンの契約内容の確認
    売却前に金融機関へ相談し、ローンの返済条件を変更できるか確認しておくと安心です。
  2. 共有名義の家は全員の同意が必要
    共有名義になっている場合、売却には名義人全員の合意が必要です。一方の配偶者だけで進められない点に注意します。
  3. 売却時にかかる費用の確認
    仲介手数料や住宅ローンの繰上げ返済手数料、譲渡所得税などのコストが発生することがあります。
    購入時より売却額が高い場合は税金負担が出る可能性があるため、あらかじめシミュレーションしておくとよいでしょう。

家を売らずにどちらかが住み続ける場合

家を売却せず、どちらかが住み続ける方法もあります。この場合は、名義の変更や住宅ローンの支払い方法、連帯保証の扱いなど、確認すべき事項が増えるのが特徴です。

不動産の所有者と住居者が一致するケース

家の名義人がそのまま住み続ける場合、住宅ローンを引き続き支払いながら、もう一方の配偶者に代償金を支払うケースが一般的です。以下の点を確認しておきましょう。

  • 住宅ローンの契約内容
    単独名義のローンならそのまま支払いを続ければ問題ありませんが、連帯保証やペアローンの場合はもう一方がローン義務から外れられるかどうかを金融機関と協議する必要があります。
  • 代償金の支払い
    家の財産価値を鑑みて公平に分配するため、住み続ける側が相手に代償金を払うパターンが多いです。

不動産の所有者と住居者が一致しないケース

名義人ではない側が引き続き住む場合は、以下のリスクや注意点があります。

  • 慰謝料や養育費の代わりにローンを支払う合意
    口約束ではなく、公正証書などで書面にしておかないと、支払いが滞った際に紛争化する恐れがあります。
  • 名義変更をしないまま住み続けるリスク
    元配偶者との関係が悪化した場合、退去を求められる可能性があります。長期的に住むなら、賃貸契約を結ぶか名義を変更するなどの対策が必要です。
  • 金融機関からの一括返済請求リスク
    住宅ローン契約では「契約者が住むこと」を前提とする場合があり、名義人が住んでいないと契約違反とみなされる可能性があります。あらかじめ金融機関に相談しましょう。

連帯保証人を外れる手続きは?

連帯保証人を外れるには、金融機関の承認が必要です。具体的には、以下の方法が考えられます。

  • 新たな保証人を立てる
    代わりの保証人の信用力によっては変更が認められるケースがあります。
  • 保証協会の利用
    収入や信用力によっては、保証協会の保証を受けることで連帯保証を外れることが可能です。
  • 借り換えやローンの組み直し
    単独でローンを組み直すには審査が必要で、場合によっては借り換えを認められないこともあります。

手続きには時間と費用がかかるため、離婚後すぐに行いたい場合は、早めに金融機関へ相談するとよいでしょう。

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財産分与時の具体的な流れ

離婚に伴う財産分与は、事前に流れを把握しておくとスムーズです。特に家の扱いについては、住み続けるか、売却するかを決めたうえで、名義変更やローンの手続きなどを進めます。以下のステップを参考にしてみてください。

ステップ1:離婚後の住まい方針を決定

以下の点を考慮しながら進めましょう。

  • 子どもの学校や生活環境
    子どもがいる場合、転校のリスクや通学の便を考慮し、負担をできるだけ抑える方法を検討します。
  • 金銭的な負担
    住宅ローンの残債や固定資産税などを踏まえ、住み続ける場合の維持費を試算します。
  • 仕事や通勤の利便性
    転職や異動の予定がある場合は、新しい住まいの条件を慎重に検討します。

ステップ2:公正証書の作成

財産分与や養育費、慰謝料の支払いについては、公正証書を作成しておくと安心です。支払いが滞った際に強制執行が可能になるため、後々のトラブルを避けやすくなります。

  • 記載内容の具体化
    財産分与や支払い条件、養育費の額・支払期間などを詳細に詰めます。
  • 必要書類や手数料の確認
    本人確認書類や住民票、登記簿謄本などが必要です。財産の規模によっては手数料が変わるため、事前に公証役場に問い合わせるとよいでしょう。

ステップ3:必要に応じた名義変更や借り換え手続き

家を一方が引き取る場合、名義変更やローンの借り換えが必要になることがあります。必要な手続きを確認しておきましょう。

  • 不動産登記の名義変更
    法務局で手続きし、登録免許税や司法書士への報酬が発生することがあります。
  • 住宅ローンの借り換え
    単独名義にする場合は金融機関の審査を受けます。収入や返済能力次第では借り換えが難しいこともあります。
  • 連帯保証や共同債務の整理
    金融機関の方針によって手続き方法が異なるため、早めに相談し、必要書類や審査条件を確認しておくのがおすすめです。

離婚時の住宅ローンに関してよくある質問

ここでは、家や住宅ローンに関して多くの人が疑問に思うポイントをまとめました。

Q1.ローン名義人が支払えなくなったらどうなる?

ローンの支払いが滞ると、金融機関は連帯債務者や連帯保証人に請求する権利があります。最終的に支払いができないままだと、競売にかけられる可能性があり、競売落札価格は市場価格より低くなることが多いです。

支払いが厳しいと感じたら、早めに金融機関へ相談し、リスケジュール(返済条件の変更)などを検討してもらうのが望ましいです。

Q2.オーバーローンでも売却したいときは?

オーバーローンの場合、売却額だけではローンを返済できないため、差額をどう補うかが課題です。任意売却やローンの返済条件の再設定など、金融機関と協議を行うことが必要です。場合によっては信用情報に影響が出る可能性もあるため、利点とリスクを踏まえて慎重に判断します。

Q3.財産分与による持ち家の譲渡に税金はかかる?

離婚時の財産分与は、婚姻中に形成した財産の公平な分配とみなされるため、原則として税金はかかりません。ただし、明らかに分与を超えた不動産の譲渡は贈与税になる可能性があります。

また、購入時より高く売却した場合は、譲渡所得税の対象になりますが、マイホームの売却には3,000万円の特別控除が適用される場合があります。いずれにせよ、不明点があれば税理士など専門家に相談すると安心です。

離婚時の住宅ローン返済の悩みは専門家に相談を

住宅ローンが残る家の財産分与は、名義やローンの契約形態、売却時の手続きなど検討すべき点が多く、慎重な話し合いが求められます。 よく確認しておかないと後々トラブルになりやすく、最悪の場合、住居を失ったり、住宅ローン返済を肩代わりしたりしなければならない可能性もあります。
そのため、早い段階で専門家を交え、住宅ローン返済や居住について、最適な方法を選択しましょう。

リスタート株式会社は、弁護士・税理士と提携し、離婚後の住宅ローン返済や居住について、様々な角度から検討いたします。

任意売却・リースバック・債務整理、さらには住宅ローンの返済計画まで幅広くご相談頂けますので、お気軽にお問い合わせください

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