分割で払えるはずだった住宅ローンなのに、突然『全額返してください』と言われた…。 もしこんな通知が届いたら、誰でも驚き、不安になりますよね。でも、これは間違いや嫌がらせではなく、住宅ローンの契約ルールに基づいた正式な要求である可能性が高いのです。
この記事では、
• なぜ一括返済を求められるのか?
• どんな状況で起こりやすいのか?
• 万が一、通知が届いた時にどうすればいいか?
について解説します。 予期せぬトラブルを避けるためにも、基本的な知識をここで確認しておきましょう。

リスタート株式会社 代表取締役 峯元 竜
建設業個人事業主を7年経営後、不動産業を12年間経験。2017年の独立開業後、事業の負債を抱えながら働きつつ 副業を掛け持ちしていた経験をもとに、依頼者目線で課題解決に取り組む。
任意売却やリースバックを通じて、一人でも多くの依頼者が安心して新しい生活をスタートできるよう支援。また独自のネットワークを活かし、複雑な金融機関との交渉や、迅速な売却サポートにも強みを持つ。
住宅ローンの一括返済を求められる主なケース
住宅ローンの一括返済を求められるのは、多くの場合、契約違反や返済の遅れが関係しています。具体的にどんなケースがあるか見ていきましょう。
返済が3ヶ月以上遅れている(滞納)
ローンの返済を3ヶ月以上(金融機関によってはそれ以上)滞納すると、契約で定められた「分割で支払う権利(期限の利益)」を失い、残りのローン全額を一括で返すよう求められます。通常、滞納が4〜6ヶ月続いた頃に正式な通知が届くことが多いです。
放置するとどうなる?
- 保証会社の肩代わり(代位弁済): 通知を無視していると、多くの場合、保証会社があなたに代わって金融機関に残りのローンを全額支払います。これを「代位弁済」と言います。
- 厳しい取り立て: 代位弁済の後は、保証会社から返済を強く求められるようになります。電話だけでなく内容証明郵便が送られてくるなど、プレッシャーは増します。
- 遅延損害金: 返済が遅れた日数に応じて「遅延損害金」が加算され、借金の総額が膨らみます。
- 最終手段「競売」: それでも返済できない場合、保証会社は裁判所に申し立て、あなたの家を強制的に売りに出します。これを「競売(けいばい・きょうばい)」と言います。競売では市場価格より安く売られることが多く、家を失ってもローンが残ってしまう可能性があります。
- 信用情報への影響: 代位弁済や競売の事実は信用情報機関に記録され、将来、他のローン(車のローンなど)やクレジットカードの審査に通らなくなるなどの影響が出ます。
返済が苦しくなったら、滞納する前に、すぐに金融機関や専門家に相談しましょう。早めに相談すれば、返済計画の見直しや、後述する「任意売却」といった、よりダメージの少ない方法を選べる可能性があります。
家を勝手に他人に貸している(無断賃貸)
住宅ローンは、基本的に「ローンを借りた本人が住む家」のために低金利で貸し出されるものです。金融機関に内緒で家を他人に貸すと、契約違反とみなされることがあります。
特に「フラット35」のような公的な性格を持つローンは、「居住用」であることが厳格な条件となっており、違反が判明すると一括返済を求められる可能性が高いです。
- 金融機関はチェックしている: 金融機関は、あなたが本当にその家に住んでいるか、定期的に(例えば住民票の確認や郵便物の宛先などで)チェックしています。
- 例外は?: 転勤や親の介護など、やむを得ない事情で一時的に住めなくなる場合は、事前に金融機関に相談し、正式な手続きを踏めば、賃貸に出すことを認めてもらえるケースもあります。勝手な判断は禁物です。
- リスク: 無断賃貸が発覚すると、一括返済だけでなく、信用情報にも記録が残り、今後のローン審査で不利になる可能性があります。
借りたお金を違う目的で使った(資金使途違反)
住宅ローンで借りたお金は、当然ながら住宅の購入や建築に関する費用にしか使えません。これを事業資金や投資用不動産の購入資金などに使うことは、契約違反(資金使途違反)となります。
「セカンドハウス購入資金」や「自宅購入資金」と偽って住宅ローンを組ませようとする悪質な業者もいるため注意が必要です。
- バレるとどうなる?: 嘘が発覚した場合、一括返済を求められるだけでなく、場合によっては法的な責任を問われる可能性もあります。特に「フラット35」では、住宅用と偽って民泊などに利用していたことが発覚し、一括返済を命じられた事例もあります。
- リスク: このような不正も信用情報に記録され、他のローンやカード審査に影響します。契約時には、正直に正しい情報を伝えることが鉄則です。
契約時に嘘の情報を伝えた(虚偽申告)
不動産会社の営業担当者などから、「本当は住む予定がないけど『住みます』と答えてください」「転勤予定はないけど、あると書いてください」のように、嘘の申告をするよう指示されるケースがあります。契約書の空欄に業者が勝手に情報を書き込んでしまう悪質な例も報告されています。
- どうすればいい?: もし虚偽の申告を求められたら、その場でサインせず、必ず第三者(弁護士、司法書士、信頼できる不動産の専門家など)や金融機関に相談してください。おかしいと感じたら、きっぱりと断る勇気が必要です。
- リスク: 業者の言いなりになって不正な契約を結んでしまうと、後で大きなトラブルに発展し、結局は自分が困ることになります。冷静な判断が大切です。
一括返済を求められた時の対処ステップ

一括返済の通知が届くとパニックになりがちですが、冷静に状況を確認し、すぐに行動を起こすことが重要です。
ステップ1:通知は絶対に無視しない
通知を無視しても問題は解決しません。むしろ、事態は悪化し、最終的に家が「競売」にかけられるリスクが高まります。競売になると、市場価格より安く売却され、多額の借金だけが残る可能性があります。
放置すれば、代位弁済や競売といったネガティブな情報が信用情報機関に登録され、今後の生活(ローン、クレジットカード、賃貸契約など)に大きな支障が出ます。まずは通知の内容をしっかり確認し、記載されている連絡先に連絡を取りましょう。
ステップ2:分割払いに戻せるか確認する(再交渉)
一度「分割で支払う権利(期限の利益)」を失ってしまうと、原則として元の分割払いに戻すことは非常に困難です。
ただし、金融機関によっては、特別な事情(例えば、一時的な収入減とその後の回復見込みなど)を考慮し、返済計画の見直し(リスケジュール)に応じてくれる可能性もゼロではありません。過去には、社会的な出来事(例:コロナ禍)を受けて、金融庁から金融機関へ柔軟な対応を促す通達が出たこともありました。
ダメ元でも、まずは正直に状況を説明し、金融機関に相談してみましょう。
ステップ3:任意売却を検討する
任意売却とは、金融機関(債権者)の同意を得て、競売ではなく、通常の不動産市場で家を売却する方法です。一括返済が難しい場合の、現実的かつ有力な選択肢となります。主なメリットは以下の3つです。
- 競売より高く売れる可能性: 市場価格に近い価格で売却できることが多く、ローン残高をより多く減らせます。
- 柔軟な対応: 売却時期や引っ越しのタイミングなどについて、買主や金融機関と相談しながら、ある程度調整できる場合があります。競売ではこのような柔軟性はほとんどありません。
- プライバシーへの配慮: 競売のように情報が公開されることが少ないため、近隣に事情を知られにくいという側面もあります。
注意点として、任意売却を進めるには金融機関の同意が不可欠であり、時間的な制約もあります。競売手続きが始まる前に、早めに検討・相談することが重要です。
任意売却については、以下でも解説しているので、ぜひご覧ください。
【任意売却について分かりやすく解説~競売との違いからメリット、条件、流れまで詳しく紹介~】
ステップ4:専門家に相談する
一括返済、再交渉、任意売却、場合によっては自己破産などの債務整理は、手続きが複雑で法律的な知識も必要です。一人で抱え込まず、専門家の力を借りるのが賢明です。
【主な相談先】
- 金融機関: まずはローンを借りている金融機関に相談するのが基本です。
- 任意売却に詳しい不動産会社: 市場動向を踏まえた売却戦略の提案や、金融機関との交渉をサポートしてくれます。
- 弁護士・司法書士: 法律の専門家として、任意売却だけでなく、債務整理全般(自己破産、個人再生など)について、あなたに最適な方法をアドバイスし、法的な手続きを代行してくれます。
- 公的な相談窓口: 市区町村の相談窓口や、法テラス(国が設立した法的トラブルの相談窓口)なども利用できます。収入などの条件によっては、無料相談や費用の立て替え制度が利用できる場合もあります。
相談先によって得意分野が異なります。自分の状況に合わせて、信頼できる専門家を早めに見つけましょう。
一括返済の通知が来たら、すぐに行動を
住宅ローンの一括返済通知が届く背景には、長期の滞納や、物件の無断転用、資金の使い道を偽った契約などがあります。こうした問題を放置すると、競売による売却や信用情報の悪化など、生活に大きな影響を及ぼしかねません。
たとえ一括返済が難しくても、任意売却や条件変更など、対応の選択肢は残されています。通知を受け取った時点で行動を起こすことで、問題を深刻化させず、生活を立て直すための一歩を踏み出すことができるでしょう。
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