親や配偶者との共有名義になっている不動産。相続や離婚をきっかけに、手放したい、名義を整理したいと思っても、話が進まないと悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
共有名義の不動産は、誰か1人の意思だけでは売却や活用ができず、管理や税金の負担も曖昧になりやすいもの。放置するとトラブルの火種になることも少なくありません。
この記事では、共有名義を解消するための具体的な7つの方法に加えて、放置した場合に起こりうるリスクや、自分の持分だけを手放す現実的な方法まで、分かりやすく解説していきます。

リスタート株式会社 代表取締役 峯元 竜
建設業個人事業主を7年経営後、不動産業を12年間経験。2017年の独立開業後、事業の負債を抱えながら働きつつ 副業を掛け持ちしていた経験をもとに、依頼者目線で課題解決に取り組む。
任意売却やリースバックを通じて、一人でも多くの依頼者が安心して新しい生活をスタートできるよう支援。また独自のネットワークを活かし、複雑な金融機関との交渉や、迅速な売却サポートにも強みを持つ。
代表的な7つの共有名義解消方法
共有名義の不動産問題を解決するには、主に7つの方法が考えられます。それぞれに利点と欠点、そして注意すべき点があります。ご自身の状況や他の共有者との関係性に合わせて、適した手立てはどれか、一つひとつ確認していきましょう。
1.共有者全員で第三者に不動産を売却する
共有関係を解消する最も一般的な方法が、不動産全体の売却です。
共有者全員で協力し、不動産会社に仲介を依頼して買い手を探します。売却で得られた代金は、登記簿に記載された各自の持分割合に応じて公平に分配します。市場価格に近い値段で現金化できるため、金銭的な不公平感が生まれにくいのが大きな利点でしょう。
ただし、この方法の実行には共有者全員の同意が不可欠です。反対がある場合は、共有物分割の申し立てによって競売などで解消を図ることになります。
また、後のトラブルを防ぐためにも、分配方法や諸経費の負担については書面で合意しておくと安心です。加えて、売却で利益が出た際は、所得税や住民税が課税される可能性も覚えておくべきでしょう。
2.分筆してそれぞれの単独名義にする
土地の場合、一つの土地を物理的に複数に分け、それぞれを単独名義にする「分筆」という方法が考えられます。分筆を行えば、各所有者がご自身の土地を自由に売却・活用が可能です。固定資産税や管理の責任範囲も明確になるのが利点でしょう。
しかし、分筆の実施には土地家屋調査士による測量や登記が求められ、時間と費用がかかります。また、土地の境界線が確定していないと作業は進められません。一定の広さがなかったり、接道義務を果たせなくなったりする土地は分筆できないこともあるため注意が必要です。
3.他の共有者から持分をすべて買い取る
もし、ご自身がその不動産に住み続けたい、あるいは活用したいと考えており、資金的な余裕があるなら、他の共有者から持分をすべて買い取る方法も有効な手段です。すべての持分を取得すれば、不動産はご自身の単独名義となります。以降はリフォームや売却などを、すべてご自身の意思で自由に行えるでしょう。
持分の価格は不動産全体の市場価値を参考に、当事者間の話し合いで決定します。成立には相手の同意が前提で、同意が得られなければ買取は実行できません。共有者同士で不動産価値の認識がずれていると、価格交渉が難航するケースもあります。
住宅ローンを利用しての買取も可能ですが、金融機関の審査を受けなくてはいけません。利用を検討する際は、審査条件や必要書類を事前に把握しておきましょう。持分を売却した側には、売却益に対して譲渡所得税が課される場合もあるため、税の扱いには注意が必要です。
4.自分の持分を他の共有者に売却する
共有者の中に不動産を使い続けたい人がいる場合は、自分の持分をその人に売却して共有関係を解消する方法があります。相手が身近なぶん、話は進めやすい一方で、感情的な対立を避ける配慮も必要です。
持分の価格は当事者間で決めますが、判断が難しい場合は不動産会社など専門家に査定を依頼し、その結果をもとに話し合うとお互いに納得しやすくなります。
買い手となる共有者の資金準備が整わない場合は、手続きが長引くこともあるため、双方で進行状況を確認しながら無理のないスケジュールを立てることが大切です。また、交渉の経過はメールやメモで記録を残しておくと、後の誤解を防げます。
合意が成立したら、売り手が司法書士に依頼して登記変更を行うのが一般的ですが、本人が申請することも可能です。
5.第三者に自分の持分だけを売却する
他の共有者との話し合いがまとまらない、あるいは協力が得られないときの手段として、ご自身の持分だけを第三者に売却する方法があります。
ご自身の財産である持分を処分することは法的に認められており、他の共有者の同意は必要ありません。共有名義の悩みから早く解放されたい場合に有効な手立てでしょう。
ただし、買い手は「持分買取専門業者」が主となり、売却価格は市場価格より安くなる傾向にあります。また、法律上の事前通知義務はありませんが、後のトラブル(他の共有者からの共有物分割請求訴訟など)を防ぐため、事前に売却の意向を伝えておくことが賢明です。
新たな共有者が加わることで、残された共有者との関係性が悪化する可能性も考慮して、あらかじめ対応しておくのがポイントです。また、契約前には、固定資産税の負担や管理費の精算方法を確認し、引渡し後に未収分が残らないよう契約書に取り決めを記載しておくと良いでしょう
6.自分の持分を放棄する
ご自身の持分を他の共有者に無償で譲り、共有関係から抜ける方法です。法律上は「放棄」という行為が認められていますが、実際には他の共有者の協力が欠かせません。
放棄の際の登記の手続きには、贈与や持分の譲渡といった形で協力を得る必要があり、同意がなければ進められません。また、持分を受け取る側には贈与税がかかる場合があり、それが協力をためらう理由になることもあります。なお、放棄した持分が国に移ることは基本的にありません。
7.共有物分割請求訴訟を起こす
当事者間での話し合いがどうしてもまとまらない場合の最終手段といえるのが、裁判所に判断を委ねる「共有物分割請求訴訟」です。これは共有者に認められた正当な権利です。
訴訟では、裁判官が当事者の主張や不動産の状況を考慮し、公平な分割方法を決定します。裁判所はまず現物分割(分筆など)を検討し、それが困難なときは「換価分割(不動産を競売にかけ、代金を分配)」や「価格賠償(特定の共有者が他の共有者の持分を買い取る)」といった方法を命じるでしょう。
しかし、強制的に共有関係を解消できる一方で、解決までに1年以上の時間がかかることも珍しくありません。弁護士費用や不動産鑑定費用など、金銭的な負担が増えやすい点にも注意が必要です。さらに、精神的なストレスも大きく、訴訟後に親族間で感情的なしこりが残る可能性もあります。
共有名義のまま放置するとどうなる?リスクを再確認
共有名義の問題解決は簡単ではありません。しかし、先送りにしたままにすると、以下のようなリスクが考えられます。
自由に売却や活用ができない
共有名義の不動産は、ご自身の判断だけでは自由に動かせないのが大きな制約です。
特に、売却や建て替えといった不動産の根幹に関わる「変更行為」には、共有者全員の同意が法律で定められています。1人でも反対すれば、計画は一切進めることができません。
また、小規模な修繕や短期の賃貸といった「管理行為」であっても、持分割合の過半数の同意を得る必要があります。共有者間の関係が悪化していると、こうした合意形成さえ困難になるでしょう。
このように、必要な同意が得られなければ何も決められず、結果として不動産が活用できません。加えて、放置期間が長いほど劣化や空き家化が進み、資産価値の低下にもつながってしまいます。
管理費・税金の負担が曖昧になりやすい
共有名義であっても、不動産を所有している限り固定資産税や都市計画税などが毎年発生します。マンションであれば管理費や修繕積立金もかかります。
固定資産税の納税通知書は代表者1人にまとめて送付されるのが一般的です。そのため、代表者が一旦立て替えて他の共有者から徴収する必要があります。もし誰かが支払いを拒否すれば、金銭トラブルに直結するでしょう。
また、支払いが滞れば延滞税が発生し、最悪のケースでは不動産が差し押さえられることも考えられます。さらに、建物の修繕を行う際も費用の分担で揉めてしまい、適切なメンテナンスができずに資産価値が下がるリスクも考えられます。
将来的に相続で共有者が増える
共有名義のまま放置すると、将来的に相続によって共有者が増えることがあります。共有者の1人が亡くなると、その持分は法定相続人に引き継がれるためです。
例えば、3人兄弟で共有している不動産で、そのうちの1人に子どもが2人いれば、相続後の共有者は4人です。このように代が替わるたびに共有者が増え、世代を重ねるうちに面識のない親戚同士が共有者になるケースもあります。
人数が増えるほど意見の調整が難しくなるため、不動産の売却手続きや管理の話し合い、合意形成が困難になるのがリスクです。
共有者が認知症や行方不明になる可能性
共有者の1人が認知症になったり、行方が分からなくなったりすると、その人は契約や登記手続きなどの法律行為を行えません。不動産の売買契約も法律行為にあたるため、意思能力を失った共有者がいる場合は、物件全体の売却ができなくなります。
このようなときは、家庭裁判所で「成年後見人」を選んでもらう手続きが必要ですが、時間も費用もかかります。共有者が行方不明の場合は「不在者財産管理人」を申し立てて選任してもらわなければならず、こちらも手続きが複雑です。
共有名義の解消は、実績豊富な専門家への相談が近道

これまで見てきたように、共有名義の解消には多くの方法がありますが、法律や税金、登記が複雑に絡むため、当事者間だけで円満に解決するのは容易ではありません。 特に、共有不動産に住宅ローンが残っている場合や、共有者の誰かが固定資産税・管理費を滞納している場合、問題はさらに深刻です。 最悪の場合、不動産全体が差し押さえられ、「競売」にかけられてしまうリスクさえあります。競売では市場価格より大幅に安い価格で強制的に売却されてしまうため、共有者全員にとって大きな損失となります。 そうした複雑な問題を抱えたまま時間を重ねるより、まずは状況が手遅れになる前に、専門家に相談して最善の解決策を探ることが賢明です。
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