共有名義の不動産も任意売却できる!知っておきたい判断と手続きの基本

夫婦や親族で共有名義になっている不動産を売却したい場合、判断や手続きには特有の注意点があります。

その中でも、本記事では共有名義の不動産でも選択できる「任意売却」について解説します。

「自分の持分だけを売る」のか、「不動産全体を売る」のかによって、手続きや必要な同意の範囲が大きく異なります。いずれの方法でも、不動産に設定された抵当権を外すためには、債権者との交渉が欠かせません。

基本的な仕組みから、共有者全員の同意が必要なケース、持分のみの売却が可能な場面までを具体的に見ていきましょう。

この記事の監修者

リスタート株式会社 代表取締役 峯元 竜

建設業個人事業主を7年経営後、不動産業を12年間経験。2017年の独立開業後、事業の負債を抱えながら働きつつ 副業を掛け持ちしていた経験をもとに、依頼者目線で課題解決に取り組む。

任意売却やリースバックを通じて、一人でも多くの依頼者が安心して新しい生活をスタートできるよう支援。また独自のネットワークを活かし、複雑な金融機関との交渉や、迅速な売却サポートにも強みを持つ。

共有者全員の合意が必要なケース

不動産全体を任意売却する場合、法律上、共有者全員の同意がなければ手続きを進めることはできません。ここでは、合意が必要なケースを紹介します。

不動産全体に抵当権が設定されている場合

住宅ローンが残る共有名義不動産では、物件全体に抵当権が設定されているケースがほとんどです。この不動産を任意売却するには、「共有者全員の同意」が欠かせません。

同意が必要とされるのは2つの理由があります。ひとつは、任意売却が民法上の「処分行為」にあたり、法律で全員の合意が求められるためです。もうひとつは、抵当権を抹消する際に金融機関の承認が必要であり、その承認も全員の売却意思を前提としているためです。

共有者の中に売却に反対する人や、離婚や別離などの事情で連絡が取れない人がいる場合、任意売却の手続きは止まってしまいます。話し合いが進まないまま時間が経てば、競売に移行するおそれもあるでしょう。また、協議が難航した場合は「共有物分割請求訴訟」に発展することもありますが、解決には長い時間と費用がかかります。

離婚時の住宅ローンと共有名義のトラブル

離婚をきっかけに、どちらもその家を離れることになれば、不動産を売る方向で考える方は多いでしょう。ただし、住宅ローンが残っていて共有名義になっていると、話はそう簡単ではありません。

特にペアローンを組んでいる場合は注意が必要です。夫婦それぞれが独立した債務者となるため、離婚しても返済義務は残ります。また、どちらかが連帯保証人になっているケースでは、相手の返済が滞ると、請求が自分へ回ってくる可能性もあります。

また、離婚後は連絡が取りづらくなったり、手続きへの協力が得られなかったりして、売却が進まないことがあります。そうしたトラブルを防ぐためにも、離婚の協議と同時に財産関係を整理しておくことが大切です。

共有者が認知症や高齢など判断能力に不安がある場合

共有者の中に、認知症や高齢で売却の意思判断が難しい方がいると、手続きはさらに複雑になります。本人の代わりに法律行為を行う「成年後見人」を家庭裁判所に選任してもらう必要があるためです。

この申立てには数か月かかることもあり、その間に住宅ローンを滞納すると、金融機関が競売の準備を進めるおそれもあります。こうした事情を踏まえ、共有者の健康状態や判断能力についても早めに確認して、対策を立てておきましょう。

共有持分のみを任意売却する場合

場合によっては、自分が所有する「共有持分」だけを任意売却することも可能です。ここでは、共有持分のみ売却するケースを紹介します。

自己持分にのみ抵当権が設定されているなら可能

夫婦それぞれが別の住宅ローンを組んで購入した場合、自分の持分だけに抵当権が設定されていることがあります。このようなケースでは、他の共有者の同意がなくても、自分の持分だけを任意売却できる可能性があるでしょう。

ただし、相手のローンの連帯保証人になっている場合は注意が必要です。持分を売却しても保証人としての責任は残るため、相手が返済を滞らせれば請求が自分に及ぶこともあります。

売却代金で完済できないときは、金融機関と相談しながら、分割返済や一部免除などの対応を検討していく流れです。これらの手続きはやや複雑なため、専門家に状況を確認しながら進めるとよいでしょう。

持分だけの売却は買い手が見つかりにくい

共有不動産では、自分の持分だけを売却することも法的には可能です。ただし、買い手が見つかりにくい点には注意しなくてはいけません。持分を購入しても単独では自由に使えず、利用やリフォームの際には他の共有者全員の同意が必要になるためです。

一方で、共有持分の買取を専門に扱う業者もあります。将来的な交渉やリスクを踏まえたうえで購入を検討してくれるでしょう。価格は相場より低くなる傾向にありますが、現金化を急ぎたい場合や関係整理を進めたい場合にはメリットと言えます。

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任意売却が選ばれる主なケース

どのような状況で任意売却が選択肢となるのか、代表的なケースをご紹介します。

住宅ローンの返済が滞った場合

病気や失業などで収入が減ると、住宅ローンの返済が難しくなることがあります。滞納が続くと、金融機関は担保となっている不動産を競売にかける手続きを進めます。

一般的には、3〜6ヶ月ほど滞納が続くと、保証会社が債務者に代わって金融機関へ残高を一括返済します(代位弁済)。その時点で、分割で支払う権利(期限の利益)がなくなり、保証会社から一括返済を求められる流れです。

一括返済が難しい場合は、最終的に競売に進みます。

ただし、その前の段階で任意売却を選ぶ道もあります。金融機関のほうから提案されることもあり、その時点で動けば、売却や残債の扱いについての条件を相談しやすくなります。

離婚による不動産の処分

離婚によってどちらも家に住まなくなる場合や、一方がローンを払い続けることが難しい場合、不動産の扱いが課題になります。管理が難しくなったり、維持費や固定資産税の負担だけが残ったりすることもあります

こうした状況で売却しても住宅ローンを完済できないときは、通常の売却ではなく任意売却を選ぶケースがあります。任意売却なら、金融機関の同意を得て市場に近い価格で売却を進められるため、競売よりも条件を整えやすいのが特徴です。

財産分与の一環として売却益を分け合う方法も取りやすく、離婚後の負担を減らすきっかけにもなります。

共有者の一方が自己破産する場合

自己破産によって共有者の一人が持分を失うと、不動産の権利は破産管財人に移ります。その際、債権者への返済のため、競売や第三者への売却がされることが一般的です。

すると、見知らぬ人と不動産を共有する形になるケースも考えられます。うまく関係が築けなければ、管理や利用の判断が難しくなり、不動産全体の売却に踏み切らざるを得ないことも出てくるでしょう。

さらに、持分が差し押さえられると、所有者自身で売却を進めることはほぼ不可能です。任意売却を選ぶなら、その前の段階で行動を始めましょう。

共有者全員で合意して進めれば、金融機関との調整を通じて不動産と債務をまとめて処理でき、競売を避けたうえで共有関係を清算できます。

任意売却を選ぶメリット

競売という強制的な手段ではなく、任意売却を選ぶことには多くのメリットがあります。ここでは、任意売却のメリットを紹介します。

競売より高値で売却できる可能性がある

任意売却は、一般の不動産市場で販売活動を行う方法です。通常の売却と同じように価格査定を行い、広告を出して買主を探すため、市場価格に近い金額で売却できる可能性があります。

一方、競売では入札者が限られ、物件を自由に内覧できないことも多く、落札価格が市場の6〜7割程度にとどまるケースが一般的です。そのため、任意売却でできるだけ高く買ってもらうことが、残債を減らすポイントです。

また、任意売却では売主・買主・金融機関が協議しながら進めるため、買主は契約条件や引渡し時期などを事前に確認しやすく、取引の見通しを立てやすくなります。こうした流れが買主の検討意欲につながり、結果として高値で売却できる可能性が高まる点もメリットです。

周囲に知られにくく、精神的な負担を軽減

競売が始まると、裁判所を通じて物件情報が公告され、インターネットでも閲覧できるようになります。そのため、「家が差し押さえられた」「ローンを返せなかった」という事実が近隣や知人に伝わってしまうおそれがあります。

任意売却では、広告やチラシの配布を控えめにしたり、紹介中心で買主を探したりするなど、状況に応じた売却手段が選べます。周囲に事情を知られにくい形で売却を進められる点が大きなメリットです。住まいを手放すこと自体に加え、周囲の目を気にする精神的な負担が少なくて済むでしょう。

引越しのタイミングを調整できる

競売では、落札者の都合で立ち退きを求められることがあり、十分な準備期間を取れない場合があります。次の住まいが決まらないまま退去することになれば、家具の保管やお子様の転校など、生活への影響も大きくなります。

任意売却であれば、買主と交渉しながら引渡し日を決められるため、引越しまでの時間を確保できます。また、条件によっては売却代金の一部を引越し費用に充てられる場合もあり、売却後の生活の立て直しも図りやすいでしょう。

共有名義の任意売却は、早めの専門家相談が鍵

これまで解説したように、共有名義の不動産を任意売却する場合、共有者全員の同意や、認知症の共有者がいれば成年後見人の選任など、多くのハードルが存在します。 さらに、抵当権を持つ債権者(金融機関)との交渉 も不可欠であり、当事者だけで手続きを進めるのは非常に困難です。

もし住宅ローンの滞納が始まっている場合、何も対策をしなければ不動産は競売にかけられ、市場価格より大幅に安値で売却されてしまいます。 そうした事態を避けるためには、一刻も早く任意売却のプロに相談することが賢明です。

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