任意売却できないケースとは?不動産の買い手がつかない・売れない場合の対策
住宅ローンの返済が厳しくなった場合の選択肢である任意売却。任意売却することで、競売よりも好条件で家を売却でき再スタートしやすくなります。
ただし、任意売却は必ずしもできるわけではありません。
条件によっては任意売却できないケースもあるので注意が必要です。この記事では、任意売却ができないケースとできない場合にどうなるかについて、詳しく解説します。
あわせて、任意売却できない状態を回避する方法も紹介するので、任意売却を検討する際の参考にしてください。
目次
不動産の任意売却とは
任意売却とは、金融機関の許可を得て不動産を売却する方法です。
住宅ローンの返済が厳しくなってきた際、家の売却という選択肢があります。
しかし、家を売却するには住宅ローンを完済し、抵当権を抹消する必要があるのです。
売却額や自己資金で住宅ローンを完済できるのであれば、問題なく売却を進められます。反対に、売却してもローンを完済できない状態なら、売却できません。
とはいえ、住宅ローンが滞ると最終的には不動産が競売にかけられてしまいます。その一歩手前でとれる対策が、任意売却なのです。
任意売却であれば、金融機関の許可を得ることで住宅ローンが完済できない状態でも、抵当権を抹消し売却を行うことができます。また、任意売却は通常の売却同様に市場で売却できるので、高値で売却できる可能性もあります。
さらに、売却額から引っ越し費用を捻出する、引っ越しスケジュールを調整できるなど比較的売却に融通が利くというメリットもあるのです。
そのため、競売を避ける方法として、任意売却選が選択されています。
任意売却できないケース
任意売却は希望すれば必ずできるわけではありません。中には任意売却ができないケースもあるので注意が必要です。ここでは、任意売却できない具体的なケースとして、次の9つを紹介します。
・金融機関が売却を認めてくれない
・共同名義人や連帯保証人の同意が得られない
・相続人の間で売却条件の合意が取れない
・建築基準法の違反や物件にトラブルがある
・国または自治体に差し押さえられている
・競売にかけられるまで期間の猶予がない
・内覧や情報公開など売却活動を行えない
・売却額が住宅ローン残債より低い
・買い手がつかない
金融機関が売却を認めてくれない
任意売却を進めるには、金融機関の許可が必要です。そのため、金融機関が認めてくれなければ売却できません。
金融機関が任意売却を認めないケースとしては、次のような理由が考えられます。
【金融機関が売却を認めてくれない場合に考えられる理由】
・物件の価格設定が市場価値に見合っていない
・ 住宅ローンの滞納が1~2回である
・ ローン残高が高すぎる
・ 金融機関との信頼関係が破綻している
金融機関にとっては、任意売却はローン残債が全額回収できないリスクが高くなります。手続きなどの手間もかかるため、基本的には返済を続けてもらう方がメリットは大きいでしょう。
そのため、返済が続けられる状態であれば任意売却を認めてくれないのが一般的です。また、ローン残高が高い・売却額の設定が相場に合っていないなど、回収できないリスクが高いケースでも任意売却が認められにくくなります。
金融機関との信頼関係が破綻している状態とは、過去にトラブルを起こしている・住宅ローンの申請時に虚偽があったなどが該当します。
【対策のポイント】
・ 任意売却の前に返済計画の見直しを相談する
・ 返済できない理由など誠意をもって相談する
・ 任意売却に強い不動産会社を選ぶ
金融機関に任意売却を相談する際には、誠意をもって相談することが大切です。
査定額なども重要になってくるので、任意売却に強い不動産会社を選んでおくとよいでしょう。
金融機関によって任意売却を認めるかどうかは判断が異なります。まずは、対策のポイントを押さえながら、一度相談してみるとよいでしょう。
相続人の間で売却条件の合意が取れない
相続した不動産の場合、遺産分割協議で相続方法に合意が得られないと家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停でも分割方法が決まらないとなると、最終的に審判に移行し不動産の分割方法が決められます。審判の結果、不動産を売却して現金で分割となった場合に取られる売却方法が競売です。
ただし、遺産分割で競売になる場合でも、任意売却することができます。しかし、この任意売却は相続人の誰か1人でも合意しなければ売却することができないのです。
【相続人の間で売却条件の合意が取れない場合に考えられる理由】
・売却額や売却条件に納得してくれない
・相続人間の関係性が悪化している
売却条件に納得できない・相続人間の関係性が悪化している場合、合意が得られない可能性があります。とくに、遺産分割で審判まで移行している段階は、相続をめぐって相続人間の関係性がかなり悪化していることが予測されます。
そのような状態では、感情的になり冷静に任意売却の話ができないケースも少なくないでしょう。
【対策のポイント】
・冷静に話し合う
・第三者に介入してもらう
まずは、冷静に話し合うことが大切です。しかし、当事者同士では感情的になってしまいため、弁護士など専門家に介入してもらうことをおすすめします。
建築基準法の違反や物件にトラブルがある
任意売却を検討している不動産が建築基準法に違反していると、任意売却できない可能性があります。建築基準法に違反している代表的なケースが、増築による建ぺい率や容積率の超過です。
また、旧建築基準法で建設されている場合も、現行の建築基準法を満たしていない可能性があります。
現行の建築基準法を満たしていない物件は、買い手が購入する際に住宅ローンの審査に通りません。状態によっては一度解体すると再建築できないケースもあり、買い手が不動産を活用しにくいことから避けられる恐れがあるのです。
建築基準法には適合していても、老朽化が激しなどリフォームしなければ住めないようなトラブルのある物件も任意売却が難しくなります。通常の売却であればリフォームやハウスクリーニングを検討することになりますが、任意売却を検討する段階では資金的に厳しい可能性があります。はいえ、そのままの状態で売却しても現状引き渡しとなると買い手から避けられる恐れがあるのです。
このような物件は、買い手が見つからない可能性が高いため金融機関も任意売却を認めない可能性が高くなります。
【対策のポイント】
・解体して土地で売却する
建物に買い手が付きにくい場合でも、立地が良ければ土地に買い手が付く可能性があります。建物を改定して土地として任意売却を検討してみるとよいでしょう。
国または自治体に差し押さえられている
国や自治体に不動産を差し押さえられている状態では、任意売却できません。
【国または自治体に差し押さえられる主な理由】
・住民税や固定資産税など多額の税金を滞納している
税金の滞納があると、まずは預貯金口座などから差し押さえられます。しかし、滞納額が高額で家に資産価値があると判断されると、家も差し押さえられ公売で税金の支払いに充てらえてしまうのです。
【対策のポイント】
・税金を滞納する前に役所に相談する
・役所に相談して差押えを解除してもらう
差押えに合う前に、払えない理由を説明する・窓口で分割納付を相談するなど対処しておくことが大切です。仮に、差し押さえに合った場合でも差押えを解除してもらえば、任意売却できます。
自治体によっては滞納分の一部支払いなどで差押えの解除に対応してくれる可能性があります。たたし、滞納分の全額納付というように厳しい条件を提示する自治体も少なくないので、できるだけ差押え前に対処できるようにしておくことが重要です。
競売にかけられるまで期間の猶予がない
任意売却は、いつまでも時間をかけて売却できるわけではありません。任意売却できる期間は、競売の開札前日までです。この期日を超えると競売になるので、任意売却できません。
一般的に、住宅ローンの滞納が始まってから開札までは1年~1年半ほどです。
とはいえ、不動産の売却は通常の売却での3か月~半年ほど時間がかかり、売ろうとなってすぐ売れるものではありません。
そのため、開札前日まで期間が短いとなれば現実的に競売は不可能でしょう。
そうなれば金融機関も任意売却を許可する可能性は低くなります。
【対策のポイント】
・期間がない場合は値下げを検討する
・早い段階で任意売却を進める
競売までの期日が近い場合は、速やかに売却できるように値下げなどを検討する必要があります。競売になれば市場価格の7~8割ほどの価格での売却になるので、値下げしてでも任意売却を進めた方がメリットがある可能性も高いでしょう。
そもそも、期間目前で任意売却とならないように、早い段階で金融機関や不動産会社に相談して任意売却を進めていくことが重要です。
内覧や情報公開など売却活動を行えない
任意売却する場合、売却活動は通常の不動産売却と変わりません。不動産売却では、内覧が行われるのが一般的です。買い手としても内覧せずに不動産の購入を決めることはほとんどないでしょう。
そのため、何らかの事情で内覧できない状態では任意売却ができない恐れがあります。
【内覧や情報公開など売却活動を行えない主な理由】
・同居家族が協力的でない
任意売却で内覧するケースでは、基本的に住みながら内覧対応することになります。そのため、プライバシーを見られたくない・任意売却に納得していないなどで同居家族が内覧に協力してくれないと内覧ができません。
【対策のポイント】
・同居家族と話し合う
・親族など内覧不要な人に売却する
まずは、内覧に納得してもらえるように家族と話し合うことが大切です。どうしても内覧に納得してもらえない場合は、親族や内覧が不要という特定の買い手をターゲットに任意売却を進めていくようにしましょう。
売却額が住宅ローン残債より低い
家の売却額と住宅ローン残債の関係性は、次の2種類があります。 アンダーローン:売却額より住宅ローン残債が少ない オーバーローン:売却額より住宅ローン残債が多い
アンダーローンであれば、売却すれば住宅ローンが完済できるので金融機関も任意売却することに同意してくれるでしょう。オーバーローンの場合、売却しても住宅ローンが完済できないため、金融機関が同意しない可能性が高くなります。
オーバーローンでも、自己資金などで補填して売却できれば問題ありませんが、任意売却を検討する段階では資金的に厳しいでしょう。
【対策のポイント】
・任意売却の得意な不動産会社を選ぶ
・売却後の返済計画を示す
任意売却でどれくらいで売れるのかを、正確に把握することが大切です。高値の査定額を提示できれば残債の少なくなるので金融機関も納得してくれやすくなるでしょう。
ただし、根拠のない査定額では金融機関は納得しません。そのため、任意売却に強く交渉力のある不動産会社を選ぶことが大切です。また、任意売却後の残債とどのように返済するのかを現実的な案で提案することも重要です。
残債が残ってもきちんと返済できることが証明できれば、金融機関も同意してくれる可能性が高くなるでしょう。
買い手がつかない
任意売却すれば必ず売却できるわけではありません。通常の不動産売却と同様に売却活動は進むため、買い手が付かなければ売却できません。
任意売却で買い手が付かない理由には、下記のようなことが考えられます。
【買い手がつかない場合に考えられる理由】
・売り出し価格の設定が高い
・物件の状態が悪い
・金融機関との連携ができていない
・不動産会社が任意売却に不慣れ
任意売却で少しでもローン残債を減らしたいと相場よりも高値を付けてしまうと、買い手は尽きません。相場よりも高値で売れない場合は、売却活動中に値下げを検討することになります。
しかし、値下げするには金融機関の許可が必要です。金融機関との連携がうまくとれないことで値下げのタイミングが合わずに買い手を逃すことにつながります。また、物件の築年数が古い・立地が悪いなど状態・条件が悪い物件も買い手が付きにくいでしょう。
不動産売却は不動産会社の力に大きく左右されます。とくに、任意売却は注意すべき点も多いだけでなく、スピード感のある売却活動が必要です。
任意売却に不慣れな不動産会社の場合、スムーズに売却を進められない可能性もあるので注意しましょう。
【対策のポイント】
・適正価格を設定する
・値下げを検討する
・任意売却に強い不動産会社を選ぶ
相場より高値を付けると買い手は付きにくくなります。売り出し価格を決める際には、適正価格を設定することが大切です。仮に、今の価格で売れないと感じた場合は、値下げを検討することも重要です。
ただし、価格設定や変更は金融機関の許可が必要になる点には注意しましょう。
不動産会社江を選ぶ際には実績などから任意売却に強いかをチェックすることも大切です。もし、今の不動産会社に不満があるなら、早い段階で変更を検討するようにしましょう。
任意売却できなかった場合はどうなるか
任意売却を進められない、任意売却したけど売却に失敗したという場合、どのようになってしまうのでしょうか。任意売却に失敗した後は、次のような状態になります。
・強制的に競売にかけられる
・残債を払えなければ自己破産になる
強制的に競売にかけられる
競売とは、担保になっている不動産を差し押さえて強制的に売却し、売却額でローン残債を支払う方法です。
住宅ローンが滞ると、金融機関は裁判所に競売を申し立てます。競売申立て後、期日までに任意売却が完了しなければ、そのまま競売が進みます。
競売がはじまると、売却は裁判所によって勝手に進められていき、売主の事情や希望は反映されません。最終的に落札者が決まれば、家を手放すことになるのです。仮に、退去を拒んだとしても最終的には強制退去となります。
また、競売には次のようなデメリットもあります。
・市場相場よりも安値での売却になる
・競売の事実が周囲に知られる
競売は、一般的に市場価格の7~8割ほどでの売却になります。さらに、競売が始まれば、裁判所が不動産調査に訪れたり、物件情報はインターネットなどに掲載されたりするため、競売の事実が周囲に知られる恐れがあります。
債を払えなければ自己破産になる
競売をしても、住宅ローンの残債があれば財産の支払い義務は残ります。競売後の在際は一括請求されるのが基本です。
一括請求に対応できないとなると、最悪自己破産することになるでしょう。
自己破産とは、裁判所に債務の支払いが不可能なことを認めてもらい返済の義務を免除してもらう方法です。自己破産することで、それ以降債務を支払う義務はなくなります。ただし、自己破産すると財産は差し押さえられてしまいます。また、一定の職業への就職も制限されるため、生活するうえでの大きなデメリットになるでしょう。
競売の場合、市場価格よりも安値での売却となるので残債額も大きくなりやすいものです。任意売却であれば、市場価格で売却できる可能性があり、残債の負担を軽減しやすくなります。任意売却後の残債については、分割で支払える可能性もあるので返済の負担を大きく軽減でき、完済を目指しやすくなるでしょう。
任意売却できない状況を回避するには
任意売却できない・買い手が付かない状況になると、競売や自己破産になる可能性が高くなります。そうなると生活の大きな負担となるので、できるだけ任意売却で進めることが大切です。任意売却できない状況を回避するためには、以下のことが重要になります。
・債権者と積極的にコミュニケーションをとる
・可能な限り早く準備を開始する
・任意売却を専門とする不動産会社に相談する
債権者と積極的にコミュニケーションをとる
任意売却は住宅ローンの返済が厳しくなった時の一つの選択肢です。とはいえ、任意売却を検討する前の段階から金融機関に相談しておくことで、返済が厳しい状況を解決できる可能性もあります。
返済が厳しいと感じた時には、早い段階で金融機関に相談して返済計画の見直しを検討することをおすすめします。一時的な収入減少であれば、返済計画を見直すことで解決できるケースもあるでしょう。
収入の減少が一時的でなく、今後も返済が厳しいとなった場合は任意売却を検討することになります。任意売却が必要になる前の段階から小まめに相談しておくことで、仮に任意売却が必要になった場合でも金融機関から許可が得やすくなる可能性があります。
可能な限り早く準備を開始する
通常の不動産売却にかかる時間だけでなく、金融機関との交渉や名義人の同意などが必要になるので、任意売却を進めるには時間がかかります。しかし、任意売却できる期間には限りがあります。
ローン滞納が始まってから任意売却を検討していると、期間内に売却できない可能性も高くなるでしょう。そのため、任意売却を県とする場合はできる限り早い段階で準備を開始することが大切です。
任意売却を専門とする不動産会社に相談する
任意売却する場合は、任意売却の実績が豊富な不動産会社を見つけることが重要です。任意売却が専門であれば、金融機関との交渉や短期間での売却にも強みがあります。
また、債務整理などに詳しい弁護士など必要な専門家を紹介してもらえる可能性が高く、任意売却だけでなくその後のサポートも期待できるでしょう。
リスタート株式会社は、弁護士や税理士と提携しており、任意売却を含めて住宅ローンの返済などさまざまな相談が可能です。
任意売却には専門的な知識も必要になってくるので、まずは気軽にお問い合わせください。
任意売却は早めに専門家に相談しよう
任意売却を検討していても、金融機関が許可しない・買い手が付かないなどの理由で任意売却できないケースもあります。任意売却できないと、最終的には競売にかけられ自己破産する可能性も高くなります。
できるだけ任意売却できないことを回避するため、金融機関とのコミュニケーションを積極的にとるなど事前に対策していくことが大切です。任意売却には専門的な知識も必要になるので、事前に相談することをおすすめします。
リスタート株式会社では、任意売却に関する無料相談も受け付けているので、お気軽にご相談ください。