離婚で任意売却するメリット・デメリットとは?必要なケースや注意点
目次
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4. 離婚をするときに任意売却をするときのメリット6つ
4-1. 競売より売却金額が高くなる可能性がある
4-2. 売却の時期を決めることができる
4-3. 売却価格から経費の支払いができる
4-4. リースバックの選択肢がある
4-5. 近隣住民に知られることなく売却できる
4-6. 裁判所の関与がない
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5. 離婚をするときに任意売却をするときのデメリット4つ
5-1. 売却できないケースがある
5-2. 信用情報に傷がついてしまう
5-3. 連帯保証人の同意が必要になる
5-4. 借入先金融機関との交渉が必要になる
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思うとおりにいかないのが人生であり、「離婚」はその一つかもしれません。ただし、実際に「離婚」となると、住まいや養育費について話し合わなければいけないことが多くあります。自宅を売却しても、住宅ローンが残り、その後の返済が難しい場合には「任意売却」という方法があります。
本記事では、離婚をするときに任意売却をするときのメリットやデメリット、離婚での任意売却をするときの注意点などを解説します。
離婚をするときにマイホームを任意売却した方がいい?
これまでの生活に区切りをつけて、新しい人生を踏み出そうにも、住宅ローンの残る自宅をどうするべきかについては、悩むことでしょう。
売却により住宅ローンを完済し、さらに手元資金が残れば問題ないものの、住宅ローン残高が売却価格を上回る場合には、その後も返済は続くことになります。
そもそも、借入先の金融機関は、融資の担保として、物件に抵当権を設定しています。通常であれば、借入金の全額返済により抵当権は解除されます。そういった意味で、ローンの残る物件は、売却自体が難しいのです。
住宅ローンが残ったとしても、金融機関の合意が得られれば、物件の売却を行うことができます。この方法を「任意売却」と言います。
交渉や相互の理解のうえに成立する特別な売却方法ですが、住宅ローンの返済が難しい場合には、選ぶことのできる最終手段となります。強制的にマイホームを手放さざるを得ない「競売」と比較すると、メリットは多くあります。
離婚にあたって、夫婦の共有財産については、納得のいく形で整理をしておくべきです。とくに、経済的理由が離婚原因となる場合には、口約束やうやむやにしておくと、その後の生活に影響を与えかねません。できれば、元パートナーとの接触は避けたいものですが、手続きの面からも、先送りせず離婚前にきちんと話し合うことをおすすめします。
任意売却は、メリットやデメリットを十分に理解したうえで、関係者と協力しながら進めることが成否のカギとなります。この記事では、任意売却における流れや特徴とともに、注意点についても紹介します。あとで後悔しないためにも、参考にしてください。
任意売却の流れについて
「任意売却」とは、住宅ローンの返済が難しい場合でも、債権者(金融機関)の合意を得て、マイホームを売却する方法です。売却代金、もしくは手元資金でローンが完済できるのであれば、通常の売却を行うことが大前提です。
通常の売却ができない場合に限っての手段であるため、任意売却による売却のながれは、通常の売却よりも複雑となり、また、関係者それぞれが信頼と協力のもと進める必要があります。
任意売却の流れについては、以下のとおりです。
- 不動産会社への相談、物件の価格査定を依頼
- 債権者との協議、調整、合意・承諾
- 不動産会社との媒介契約の締結、売却活動
- 物件購入者の決定
- 不動産売買契約の締結
- 売却金の決済、物件の引き渡し
不動産会社に住宅の価格査定を依頼する時点では、通常の仲介による売却と同じです。査定価格が住宅ローン残高を下回る場合には、手元資金による完済の可否の検討を行い、完済が難しいとの判断であれば、「任意売却」が選択肢となります。
上記2の債権者とは、通常、住宅ローンの借入先である金融機関ですが、すでにローンの支払い遅延が発生している場合などでは、債権回収会社へ債権譲渡されている場合もあります。
その場合に合意・調整を行う相手方は、債権回収会社となります。こうした合意・調整が必要なことを除けば、流れとしては、通常の売却とさほど変わりません。
離婚をするときに任意売却をした方がいいケース2つ
住宅ローンが残る場合におけるマイホームの売却について、自分の意思で選ぶことのできる最終手段とも言える「任意売却」ですが、離婚にあたり、任意売却をした方がよいのは、どのようなケースでしょうか。
具体的には、次が考えられます。
● 連帯保証人になっている場合に解消したいケース
● 今後の住宅ローン返済が困難、もしくは、返済に不安があるケース
連帯保証人を解消したい
連帯保証とは、文字通り、債務者の返済責任を連帯して保証する契約であり、離婚により夫婦でなくなったとしても消滅しません。債権者は連帯保証人に対し、支払いや財産の差押えと行うことができます。
物件購入時には、夫婦で住宅ローンを返済していくことを前提として、主債務者の連帯保証人になることもよくあることです。
ただ、離婚となると状況は変わるでしょう。離婚後も元パートナーが住宅ローンを支払い続ける場合、返済が順調に進めばよいのですが、遅延や滞納が生じると返済の督促を受けることになりかねません。
こうした不安やリスクを回避するためにも、「任意売却」が選択肢となります。
住宅ローンの返済が困難である
住宅を売却しても、住宅ローンが残り、その返済が難しい場合において「任意売却」は選択肢となります。
とくに、夫婦2人で住宅ローンを借りる連帯債務の場合やペアローンの場合などは、収入を合算した返済計画であるため、これまで通りの返済額の捻出は現実的ではないでしょう。
離婚直後はなんとか支払えたとしても、時間の経過とともに問題が深刻化する可能性も否定できません。不安を抱えながらでは、新しい生活に影響を与えかねませんので、早めの解決を目指したいものです。
離婚をするときに任意売却をするときのメリット6つ
離婚にあたり、住宅を処分したくても、売却価格がローン残高を下回る場合、手元資金で完済しない限り、通常の仲介による売却はできません。債権者の合意が得られれば、そういった場合の選択肢として「任意売却」があります。
何もせず、支払いが滞った場合には、「競売(けいばい)」により強制売却され、立ち退かなければなりません。競売とは、民事執行法という法律にもとづき、裁判所は所有者の同意なしに売却することを認め、所有者に代わって、オークション形式で物件購入者を決定する手続きです。
基本的に、任意売却は、「競売と比較してどちらがよいか」という観点で考えます。
競売より売却金額が高くなる可能性がある
裁判所の主導のもとで行われる「競売」と比較すると、不動産会社との契約により、市場価格で売買活動を行う「任意売却」の方が高く売却できる可能性があります。
一般的に、競売の売却価格は、市場価格の8割程度とされています。高く売れれば、ローン返済に充てられる金額がふえるため、売却後の残債の支払い負担を抑えられますし、金融機関にとっても多く回収できるため、合意に至る確率が高まります。
売却の時期を決めることができる
競売により落札者が決定すると、すぐに引き渡さなければなりません。一方で、任意売却は、所有者の意思による売却であり、ながれは通常の不動産売却と変わらないため、引き渡しの時期について所有者が決めることができます。
金融機関との調整や状況にもよりますが、離婚時期にあわせての売却も可能です。
売却価格から経費の支払いができる
競売では、落札者が落札した売却代金は債権者(金融機関)へのローンの返済に充てられます。また、競売申立てにかかる費用は債務者(所有者)負担です。
一方、任意売却では、売却代金から不動産会社への仲介手数料のほか、引越し費用を差し引くことができます。
売却しても手元にお金が残らない、費用も捻出しなければならない競売と比較すると、自己資金の負担のないことは、任意売却のメリットと言えます。なお、引越し費用は、金融機関にもよりますが、10万円から30万円が認められます。
リースバックの選択肢がある
離婚しても、子どもには、可能な限り、これまで通りの生活を続けさせたいと願う親は多いものです。任意売却であれば、「リースバック」により、売却した物件にそのまま住み続けることができます。
リースバックとは、売却した物件の買主と賃貸借契約をすることで、家賃を払い、住み続ける方法です。つまり、売った物件を借りるのです。リースバック会社や投資家が買主となることが多いようです。
当然ながら、残ったローンの返済と家賃の支払いが発生するため、負担は大きくなります。一方で、競売には、そういった選択肢も配慮もありません。
近隣住民に知られることなく売却できる
競売では、裁判所の主導のもと、物件および近隣の調査を行い、入札に必要な情報が公開されます。そのため、競売にかけられていることが知られ、離婚後の経済状況などを近隣に推測されてしまうことが懸念されます。
任意売却であれば、不動産会社の仲介により、通常の売買と同様に売却活動が行われるため、住宅ローンの支払いが難しいなどという事情が公開されることはありません。
裁判所の関与がない
競売は、査定や売却予定日の決定といった手続きが裁判所主導のもと進められます。
所有者の意向や都合は受け付けられないため精神的ダメージを抱えがちですが、任意売却であれば、裁判所の関与はないためプレッシャーが少ないと言えるでしょう。
離婚をするときに任意売却をするときのデメリット4つ
ただし、任意売却には、デメリットもあります。「任意売却」という言葉自体、一般的に知られていないため、偏った情報を鵜呑みにしてしまうことが懸念されます。くれぐれも、こうしたデメリットを理解したうえで、任意売却の検討をおこない、判断すべきです。
売却できないケースがある
不動産会社との媒介契約により売却活動を始めたとしても、その物件を購入したいという人がいなければ、売却は成立しません。つまり売却できないケースもあり得るということです。
通常の売却と異なり、値下げをして様子をみるという時間的な余裕はないため、購入者が見つからず売却できないケースでは、競売に切り替えられてしまうこともあります。
債権者(金融機関)は、競売よりも高く売れる可能性に期待して、任意売却には比較的前向きに対応しますが、売れない状況においては、売却価格は低くても、早急に回収できる競売を選ぶのです。
信用情報に傷がついてしまう
住宅ローンの借入れは、住宅を購入するための資金を借り、返済をするという債務者(住宅購入者・お金を借りる人)と債権者(金融機関・お金を貸す人)との契約(約束)です。
返済できないという状況は、「約束を守れない人」としてみられ、社会的責任を負うことになります。「信用情報」は、任意売却に限らず、クレジットカードやローン契約などの取引事実を登録した情報です。支払い遅延や滞納の事実がある場合には、信用情報に傷がついてしまう可能性があります。
任意売却したという事実が残るのではなく、あくまでも、住宅ローンの返済遅延や滞納の事実がデータとして残ります。こうしたデータが残っていると、5年~10年の間は金融機関からの融資やクレジットカードの作成は難しくなります。
連帯保証人の同意が必要になる
住宅ローン契約において、債務者に連帯して責任を負う「連帯保証人」がいる場合には、連帯保証人の同意を得なければ任意売却はできません。
夫が主債務者、妻が連帯保証人となり住宅ローンを組むことはよくあることです。離婚にあたって「話したくない」「会いたくない」というケースも多くみられますが、相手に知られずに売却することはできません。連絡を取り、売却の承諾を得る必要があります。
借入先金融機関との交渉が必要になる
任意売却では、住宅ローンの借入先金融機関と交渉をし、合意が得られなければ売却はできません。
通常の売却であれば、売却代金の決済により資金が回収できれば、担保となっていた抵当権を抹消して契約は消滅します。そのため、売却活動における金融機関との交渉は行われません。
債権者が設定する抵当権は、資金の回収が困難となった場合に、権利を行使することで競売にかけ、資金回収を図るために行います。任意売却によって、抵当権を放棄し、無担保となることは債権者にとってリスクでもあります。
そういった状況のなかで、債権者に承諾してもらうためには、知識と経験のある専門の不動産会社担当者の技量と関係者の協力が不可欠であり、ハードルの高い売却方法です。
離婚での任意売却をするときの注意点6つ
任意売却のメリット・デメリットをお伝えしましたが、それぞれの物件の状況やタイミングによって有効性は異なります。さらに、離婚における任意売却では、以下のような注意点もありますので、以下を参考にしてください。
ローンを組んだ日が浅いと任意売却ができない
基本的に、住宅ローンの借入れから3年以内の任意売却は認められない場合が多いのが現状です。
債権者(金融機関)にとって、あまりにも早期の任意売却は、想定外であり、詐欺などの犯罪性があるのではと疑われるためです。
住宅ローンの申込みの際に、物件価格にローン事務手数料や登記費用などの諸費用を上乗せして借入れをしているケースがみられます。
借入れからの年数が浅ければ、物件そのものの査定価額は当初とさほど変わらなくても諸費用分がふくまれるローン残高は大きくなりがちです。そういった場合には、債権者(金融機関)は任意売却を拒むことも考えられます。物件価格を超えるローン設定をしている場合には注意が必要です。
登記上の名義と売却人が一致している必要がある
任意売却にあたっては、物件の登記上の所有者の名義と売却人が一致しており、また、住宅ローンの登記上の住所や氏名が一致している必要があります。
離婚後の任意売却では、登記上の手続きが必要になる可能性もあるため、そういった理由からも、任意売却は、離婚前に行うとスムーズです。なお、名義人でない連帯保証人は、不動産の売却はできません。
売却後に残ったローンは支払いが必要になる
任意売却でも競売でも、売却金額で返済しきれなかったローンの残額は支払いが必要です。債権者(金融機関)の合意を得て売却をすれば、支払いの義務がなくなる訳ではありません。
とくに、夫婦それぞれが住宅ローンの借り入れを行うペアローンや一方が連帯保証人となる住宅ローンの場合は、離婚しても、支払いの義務は残ったままです。ただし、任意売却後の残債の返済については、返済条件の緩和ができる可能性があります。どうしても支払うことが困難な場合には、「債務整理」をすることになります。
着手金はない
売却活動にあたって、着手金を請求されるケースがみられます。任意売却では、着手金は発生しません。
注意すべき点として、くれぐれも「悪徳業者」には気をつけるべきです。
任意売却による売却では、適切な価格の設定や売却代金から差し引く引越し費用の算出など債権者との交渉を行う不動産会社の手腕が大きく影響します。時間と手間をかけたにもかかわらず、任意売却がうまくいかずに競売で手放すことにもなり得ません。
悪意ある業者に騙されないよう注意するとともに、実績のある不動産会社への依頼をおすすめします。
所有名義を変えても連帯保証人であることは変わらない
物件取得時には、資金の負担割合によって持ち分割合を設定することが一般的ですが、離婚の場合、慰謝料の意味合いで一方の所有としたうえで住宅ローンの負担は継続するというケースもあり得ます。
離婚直後は、ローン返済されていたものの、しばらくして途絶え、連絡先もわからない状況となり、連帯保証人に督促となりかねません。
所有名義と住宅ローン契約は別です。住宅ローンを完済して契約が消滅しない限り、連帯保証人としての責任は逃れることはできません。
債務者が複数いると返済額の交渉が必要になる
住宅ローン以外に、カードローンや消費者金融などからの借入金がある場合には、さらに注意が必要です。
当然ながら、借りたお金は返済の義務があります。借入先や借入金額を把握したうえで、債務者に対して、返済額を交渉する必要があります。
まとめ
「夢のマイホーム」とも言われ、住宅購入は、人生のなかでも、大きな買い物のひとつです。そのため、長期にわたる住宅ローンを組んで購入することが一般的でしょう。おそらく、購入時に「離婚」を想定する人はいないと思われますが、収入合算や連帯保証人として住宅ローンの借入れをしている場合、離婚時の財産分与で問題が生じることがあります。
自宅の売却にあたって、査定金額が思うようにいかず、住宅ローン残高を下回ることもあり得ます。
住宅ローンの支払いが困難で遅延や滞納がある場合、裁判所主導のもと「競売」にかけられると、強制的に売却、退去せざると得なくなります。
競売を回避する手段として、債権者と交渉し合意のうえ「任意売却」という手段も考えられます。離婚にあたっては、これまで夫婦合算でのローン返済が一方の負担となる場合や慰謝料として負担するなど今後の生活に不安があるものです。
「任意売却」は、そういった状況のなかでもメリットあるため選択肢となりますが、デメリットや注意すべき点も多くありますので、専門の不動産会社に相談のうえ、十分に検討しましょう。
いずれにしても、先送りにせず、離婚前におこなうことをおすすめします。