分譲マンションの管理費とは?毎月の相場や内訳、修繕積立金との違いについて解説
目次
分譲マンションを購入すると、毎月管理費を負担することになります。しかし、管理費の相場や内訳についてはよくわからない人もいるのではないでしょうか。
本記事では、分譲マンションの管理の相場や内訳、修繕積立金などのほかの費用との違いを解説します。分譲マンションへの購入を検討している人は、管理費の負担に疑問を感じないようにするためにも、ぜひ参考にしてみてください。
分譲マンションの管理費とは?
マンションを購入すると、毎月管理費を負担することになります。以下の見出しでは、管理費の詳細について解説します。
管理費の定義
管理費とは、マンションの共用部分のメンテナンスや管理に充てられる費用のことです。管理費は、マンションの区分所有者全員で負担し合います。
管理費に含まれるもの・用途
マンションの管理費は、さまざまな用途に充てられます。具体例は、以下のとおりです。
● マンション管理会社への管理業務委託費
● 共用廊下やエントランスホール、ゴミ置き場など共用部分の掃除にかかる人件費
● 管理人や巡回警備員の人件費
● 電球や清掃道具などの備品や消耗品費
● 共用廊下やエントランス、エレベーターなどの電気代
● 共用部分で使用する水道代
● 共用部分の火災保険や地震保険料
● マンション共用部分に課される公租公課
● エレベーターや消防設備など共用設備の維持費と保守点検費
● 経常的な補修費
● 管理組合の運営費用
分譲マンションの毎月の管理費は平均約200円/m2
マンションの管理費の相場は、国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」では、1㎡あたり平均231円と発表されています。
※参照元:「平成30年度マンション総合調査結果」|国土交通省
例えば専有面積が80㎡の場合、毎月かかる管理費は1万8,000円程度という計算になります。
ちなみにマンションの管理費は、共用部分の使用頻度では左右されません。しかし、マンションの規模や類型、新築時の管理費の想定によって差があります。以下の見出しでは、それぞれで管理費にどのような違いが出るかについて解説します。
マンションの規模による違い
マンションの規模による管理費の違いですが、傾向としては、大規模マンションのほうが安価です。
なぜなら、マンションの管理にかかる費用が同じ場合は、戸数が多いほど一戸あたりが負担する管理費も割安になるためです。例えばエレベーター1基あたりの使用想定住戸数が多いほど、そのマンションの1戸あたりのエレベーターの維持費の負担は安くなります。このように共用部分を多くの住戸(=区分所有者)でその負担を案分することで管理費は安くなります。
マンションの類型による違い
マンションの類型とは、タワーマンションや低階層マンションなど、おもに高さによる分類を指します。
そして20階建て以上のタワーマンションの場合は、大規模であっても管理費は高額な傾向があります。
実際に先ほどの国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」によれば、一般的なマンション管理費の相場が1㎡あたり平均231円であるのに対し、タワーマンションの場合は269円と約11.6%高いことがわかっています。
※参照元:「平成30年度マンション総合調査結果」|国土交通省
タワーマンションの管理費が高くなる理由には、共用施設の多さや高層建物に義務づけられた設備の維持費、コンセルジュサービスなど付帯する高度なサービスの人件費が挙げられます。
タワーマンション設備については、フィットネスジムやスカイラウンジなど、ハイグレードなものが目立ちます。また、コンシェルジュや夜間警備員などのサービスが充実しているため。これらにかかる人件費が管理費に上乗せされることが要因です。
新築時の管理費の設定金額による違い
新築時の管理費の設定金額によっても管理費相場は代わってきます。例えば、バブル期やリーマンショック前のマンションは価格が高騰しており、そういった時期は管理費の設定金額も高くなります。
管理費は管理組合で見直しすることもできますが、区分所有者の意識の問題や管理費見直しのための議決を取りまとめるのが大変という実態があり、そういった見直しが難しく未だに高い傾向があります。
一方、1998年~2006年の間に建てられたマンションの管理費は、統計的には比較的安い傾向があります。
分譲マンションの管理費とその他費用との違い
管理費と似た費用として、以下のものが挙げられます。
● 修繕積立金
● 管理準備金
● 修繕積立基金
以下では、上記費用と管理費の違いを解説します。
修繕積立金との違い
修繕積立金は、マンションの大規模な修繕に備えて積み立てられるお金です。
マンションには建物劣化診断を含む長期修繕計画が立てられており、計画に基づいて外壁や屋上などの補修、エントランスや廊下、階段などの共用部分の補修・改修、共用設備の補修・更新、配管設備の維持補修などの修繕がされます。これらの修繕のうち、一定の時期に行わる大規模修繕に備えるために区分所有者全員が負担し、積み立てていくものが修繕積立金です。
大規模修繕では、マンションの共用部分の経年劣化に対する修繕、改修、更新が行われ、特に旧耐震基準で建てられた建物の場合は、耐震工事も該当します。
大規模修繕は10年~13年程度に1回行われ、実施の際には高額な費用がかかるため、あらかじめ修繕積立金を積み立てておく必要があるのです。ちなみに修繕積立金は、マンションの築年数が進み修繕の必要が大きくなるほど高くなる傾向があります。
管理準備金との違い
管理準備金は、毎月発生する管理費とは異なり、新築マンション購入時のみ負担する費用です。
従って、中古マンションを購入する際には管理準備金の負担はありません。
新築時は管理組合も設立したばかりで、管理費が十分に準備できていません。それでも維持管理に必要な費用は発生するため、その費用に備えるため最初に管理準備金として新築マンションの最初の区分所有者から徴収します。
具体的には、清掃用具の購入や火災保険料など、マンションの管理組合として一時的に必要となる支出に充てられます。管理準備金の相場は、タワーマンションやハイグレードマンションなどを除く一般的なマンションであれば1戸当たり数万円程度です。
修繕積立基金との違い
修繕積立基金も、管理準備金と同様に新築マンション購入時に発生する費用です。
修繕積立基金も、管理準備金と同様に管理組合の設立当初は修繕積立金が不十分であるため、修繕積立金がある程度貯まる前に修繕の必要が発生する機会に備えて用意されます。修繕積立基金の相場は、一般的なマンションで
管理費の安い分譲マンションを見つける方法
管理費は個々の分譲マンションによって異なりますが、比較として安い物件を見つける方法が2つあります。
- 不必要な共用施設やサービスが含まれていないか確かめる
- マンションの戸数や階層を確認する
以下では、上記の方法について解説します。
不必要なサービスが含まれていないか確かめる
分譲マンション選びの際は、自身にとって不必要な共用施設やサービスが含まれていないか確認しましょう。
なぜなら管理費は、共用施設やサービスの利用頻度にかかわらず一定の金額となっているためです。自分にとって不必要な共用施設やサービスのある分譲マンションを購入してしまうと、利用しない共用施設やサービスの管理費用を支払っていることになり、無駄な印象が強く、管理費が高く感じられてしまいます。
例えば、管理費の高いタワーマンションなどでは、マンションの共用施設として、フィットネスジムやプール、キッズルームなど一般的なマンションにはない施設があることがあります。これらの施設を利用しない人は、こうした施設のない一般的な分譲マンションを選んだほうが、管理費の観点では割高感がありません。
特にプールや庭の噴水、エントランスの水を流す演出など、水を使ったサービスには要注意です。その理由は、水を使うサービスの場合は水道代がかかるうえ、設備の劣化によってメンテナンスは高額になる傾向があるためです。
マンション内にプールや温泉施設などがあり、そういった施設を利用したい場合は管理費が高くても問題ありませんが、利用しないのであれば管理費からみると避けたほうが無難でしょう。
マンションの戸数や階層を確認する
一般的な分譲マンションでは、戸数が多いほど管理費が安くなる傾向があります。また階層については、10~19階建てのマンションであれば、統計的には管理費の相場が低めとなっています。
このように、マンションの管理費は戸数や階層によって異なるため、物件選びの基準のひとつとして検討しましょう。
ちなみに、20階建て以上のタワーマンションや3階建て以下の低層マンション、20戸未満の小規模マンションの管理は割高な傾向があります。
分譲マンションの管理費に関する注意点
毎月の住宅ローンの返済や修繕積立金などの月々の支払いもあるため、管理費を安く抑えられるのは、確かに家計にとってはありがたいことです。しかし、マンションの管理費は、提供されるサービスの質に比例する傾向があります。つまり、管理費が安いのには相応の理由があることがあるため要注意です。
安ければよい訳ではない
マンションの管理費が相場よりも明らかに安すぎる場合は注意しましょう。なぜなら、管理費が安い分、管理が疎かになっていることがあるためです。管理費が高いかどうかは、単純な金額ではなく、その管理内容との費用対効果で判断しましょう。
管理費が安い分マンションの管理が疎かになる可能性がある
管理費が安いということは、それだけ管理の質が低い可能性があります。具体的には、共用部分の清掃が行き届いていなかったり、管理人の人件費を削減するために設置時間を短縮していたりするケースが挙げられます。
このように、管理費と引き換えに住み心地や安心感が損なわれていることもあるため「管理費が安い=経済的に良い物件」であると短絡的に判断してしまうのは危険です。
管理費が高いかどうかはあくまで費用対効果で判断する
管理費が高いかどうかは、金額ではなくその管理の内容との費用対効果で判断しましょう。例えば、タワーマンションなどでフィットネスジムやキッズスペースなどの共用部分を利用しない人によっては、そのマンションの管理費は割高となります。
一方で、共用部分の清潔さや治安のよさを重視する人にとっては、多少管理費が高くても費用対効果はよいと考えられます。
マンションを購入して住むにあたって、何を重視すべきか、どのような設備をよく利用するのかは人によって異なります。要するに、管理費の費用対効果の捉え方もまた人それぞれであるため、相場はあくまで参考にしつつも自身の感覚を大切な判断基準とするとよいです。
将来値上がりする可能性がある
マンションの管理費は、管理組合の決議で変更しない限り変わりません。一般的に、管理費の金額は管理組合で日常的にどのような管理業務を行うかを決め、その費用を算出して各住戸(区分所有者)に振り分けます。管理業務の内容やそのコストが変わらなければ管理費も一定に保たれます。
しかし、マンションの築年数が進むに従って、経年劣化による補修の頻度が増えたり、最低賃金の上昇にともなう管理人等の人件費が上昇したりする可能性があります。このように、マンションの日常的な維持管理に必要なコストが増加する場合は、管理費も将来値上げされることがあり得ます。
まとめ
マンションの管理費は、共用部分の維持管理を行うため、管理人や清掃員の人件費、設備などの日常的な保守点検など、マンションの快適な住環境の維持に必要な費用を賄うものです。それでも管理費を安く抑えたい場合は、戸数の多いマンションを選んだり、使用しない共用施設やサービスの少ない物件に選択肢を絞ったりしましょう。ただし管理費は、あくまでマンションの住み心地をよくする目的で必要とされるものであるため、安さだけにとらわれないよう気をつけましょう。
記事の監修者:秋津 智幸 不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。 横浜国立大学卒業。自宅の購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆・監修にも取り組んでいる。 |
<資格>
- 公認不動産コンサルティングマスター
- 宅地建物取引士
- ファイナンシャルプランナー(AFP、ファイナンシャルプランニング技能士2級)
<著書>
- 「賃貸生活A to Z」(アスペクト)
- 「貯蓄のチカラ ~30歳からのおカネの教科書」(朝日新聞出版)
- 「失敗ゼロにする不動産投資でお金を増やす!」(アスペクト)
- 「〔2019~2020年版〕30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方」(監修)
(河出書房新社) - 「〔2021~2022年版〕30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方」(監修)
(河出書房新社) - 「〔2023~2024年版〕30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方」(監修)
(河出書房新社)