任意売却とは?メリット・デメリットをわかりやすく紹介!条件や流れも
目次
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1. 任意売却を選択する6つのメリット
1-1. 売却条件を自分の意思で決定できる
1-2. ローンの滞納が周囲に知られる心配が少ない
1-3. 交渉が成功すれば引っ越し費用を負担せずに済む
1-4. 残債の分割払いに応じてもらえる
1-5. 売却後も住み続けられるケースもある
1-6. 売却価格が市場価値に近くなる
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2. 任意売却で気をつけたい5つのデメリット
2-1. 手続きに手間と時間がかかってしまう
2-2. 信用情報に傷がついてブラックリストに載ってしまう
2-3. 債権者や連帯保証人の同意を求めなければいけない
2-4. 売却後も残債の支払い義務は残ってしまう
2-5. 交渉が成立しなければ競売にかけられる恐れがある
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任意売却とは購入した住宅を売却することをいいます。ほとんどのかたはマイホームを購入したらそこを終の棲家として考えるかたが多いでしょう。しかし、思いもよらないことで購入した住宅を売却しなければならない事態に陥ることもあります。任意売却のメリットやデメリットはもちろん、もしそういった事態になったときにどのように手続きをすすめていいのかといった基礎知識についてお伝えします。
任意売却を選択する6つのメリット
一言に任意売却といってもさまざまな事情やケースがあります。
まずは任意売却を選択するメリットにはどういったものがあるのでしょうか。
ここでは、以下の6つのメリットについてまとめていきます。
● 売却条件を自分の意思で決定できる
● ローンの滞納が周囲に知られる心配が少ない
● 交渉が成功すれば引っ越し費用を負担せずに済む
● 残債の分割払いに応じてもらえる
● 売却後も住み続けられるケースもある
● 売却価格が市場価値に近くなる
売却条件を自分の意思で決定できる
任意売却のメリットは自分の意思決定で売却をすることができる点です。
任意売却とよく比較して話題に上がるのが競売です。競売は債務超過によって支払ができなくなったかたの資産を債権者が競売にかけて強制的に債務を回収する方法です。
競売の場合には債務者はいつ売却するのか、いくらで売却するのかを自己決定できません。裁判所が売却に関する決定をおこないます。
また競売した結果、売却が決まった場合には引渡命令がだされ、立ち退きの強制執行がされます。
任意売却であれば、自分で物件をいくらで売却するのか、いつ売却をするのかを決められます。また売却先である取引先と物件価格や引き渡しの時期などを交渉しながらできる点がメリットになります。
ローンの滞納が周囲に知られる心配が少ない
競売の場合には、競売情報がインターネット上で公開されます。
インターネットの競売情報には、物件情報と合わせて、関係人の陳述書や執行官の意見といったものも公開されています。その書類からなぜ競売に至ったのかの経緯を確認できます。
そのため、競売の場合には周囲のかたに物件を競売にかけなければならないほど、経済状況が悪いと知られてしまう恐れがあります。
一方、任意売却であれば、売却する事情が周りに知られることはありません。
ローンの滞納が原因で物件を売却せざるを得ない状況であっても、任意売却であれば競売とは違って、不動産売却の取引は通常の売買取引になります。
取引の相手先であっても売却理由までは教える必要はありません。
交渉が成功すれば引っ越し費用を負担せずに済む
不動産売却には登記費用や仲介手数料といった諸経費がかかります。諸経費に関しては任意売却であろうが、競売であろうが発生します。
任意売却であれば売却代金から諸経費や引越し費用を融通してもらえることもあります。引っ越し費用の融通は必ずできるわけではない点に留意が必要です。もし債権者との交渉によって融通してもらえる場合には最大30万円を売却代金から融通してもらえます。
しかし競売の場合には売却代金から売却にともなう諸経費しか清算をすることができません。引き渡しにともなう引越し費用までは融通してもらえませんし、立退料といった形で費用を補填するといったこともしづらいです。
残債の分割払いに応じてもらえる
住宅を購入したときのローン返済が残っている場合には、売却代金から清算するのが通常です。ただ清算といっても残債のすべてを返済できない可能性もあります。
そうなってしまった場合に任意売却は債権者と生活状況や収入を考慮して、返済計画を立てて、引き続き分割してローンを返済できます。
一方で競売の場合には残債は一括での返済が求められます。
売却後も住み続けられるケースもある
任意売却は物件を売却したあとに、継続して住み続けることもできます。
これはあくまでも売却した相手方との交渉が必要です。任意売却は自由取引の中で物件を売買するため、誰に物件を売るのか売主が買主を選ぶことができます。
たとえば身内に買い取ってもらったり、不動産運用をしているかたを探して買い取ってもらったりすることで売却後に賃貸物件として借りて住み続けるといったこともできます。
仮に物件の売買契約は成立したけれども、次の住まいが決まっていなかったとしても相手さえ了承してくれれば、引越しが決まるまで住まわせてもらうといった調整もできるでしょう。
賃貸契約のため、財産として差し押さえられる恐れもありません。また家賃滞納をしたら話は別ですが、競売で売却をするのとは異なり、売却したあとに立ち退きをいわれることもありません。
売却価格が市場価値に近くなる
任意売却であれば、周辺相場に合わせて物件情報を掲載して売却を進めていけます。物件に瑕疵などがなければ市場価格で売却できる可能性が高いです。
競売の落札価格は一般的に市場価格の7割程度で取引がされます。その理由としては、債務超過に陥り早急に物件を売却して返済しなければならない離婚したので早く売却をして現金化したい、しばらく人が住んでおらず大規模修繕が必要であるといった特殊事情があるからです。
なお特殊事情に関しては競売情報で確認できます。
任意売却で気をつけたい5つのデメリット
任意売却におけるデメリットは、次の5つです。
● 手続きに手間と時間がかかってしまう
● 信用情報に傷がついてブラックリストに載ってしまう
● 債権者や連帯保証人の同意を求めなければいけない
● 売却後も残債の支払い義務は残ってしまう
● 交渉が成立しなければ競売にかけられる恐れがある
それぞれについて紹介していきます。
手続きに手間と時間がかかってしまう
任意売却するには手間と時間がかかります。競売の場合には裁判所が手続きをおこなうため、手間や時間はかかりません。
しかし任意売却の場合には売却するための前準備から売却をするために行動を移すにあたってさまざまな手続きが生じます。
売却する物件が夫婦の共同名義になっていたり、連帯保証人がいたりする場合には、自分一人だけの意思決定で売却を進めることができません。共同名義者や連帯保証人に合意を得なければ売却手続きを進められませんので注意しましょう。
売却の手続きに関しては不動産会社を仲介としておこなうのが一般的です。不動産会社とのやり取りはもちろん、もし住宅購入時のローン残債が残っている場合にはその債権者との交渉が必要になってきます。
またいざ売却に出したとしても買主がすぐに見つかるとは限りません。もし急いで売却をしなければならないときには市場価格よりも安くして売却に出さなければならないケースもあるでしょう。
そのため、ある程度計画性をもって取り組む必要があります。
信用情報に傷がついてブラックリストに載ってしまう
お話の前提として任意売却をすることで信用情報に傷がついてブラックリストに載ってしまうわけではありません。
任意売却に至る過程において信用情報に傷がつきブラックリストに掲載される恐れがあります。住宅ローンの返済をするなかで返済が61日以上、もしくは3回目の支払日を超える延滞をすると、信用情報に傷がつく可能性が高くなります。
信用情報に傷がつくとその記録は約5~7年間残ります。その間は新しくクレジットカードを発行したり、新規で借り入れをしたりすることが難しくなります。
どのくらいの期間で記録が抹消されるのか、傷がついていたとしてもいくらまでなら借り入れができるのかは人によって異なります。
債権者や連帯保証人の同意を求めなければいけない
任意売却をおこなうには、借り入れをしている金融機関いわゆる債権者や連帯保証人がいる場合にはその連帯保証人の同意が必要になります。
債権者である金融機関からしたら借入金をしっかりと返済してくれさえすれば不利益はありません。そのため、金融機関と交渉をしながら返済計画を立てていくことで同意を得られやすくなります。
逆に返済計画が明確でなく、あやふやな場合には金融機関からしたら任意売却を進められると抵当権を設定して担保にしている不動産を失くしてしまうことになり、任意売却に同意してくれないケースもあります。
また連帯保証人はもし債務者が返済を滞っていると代わりに弁済をしなければいけません。
連帯保証人は配偶者にしていることが多いでしょう。連帯保証人はもし任意売却をしても残債が残る場合にはその返済に関しても支払い義務が生じます。
そのため、しっかりとした返済計画を説明して同意を得ておかなければのちのちもめる原因になってしまいます。
売却後も残債の支払い義務は残ってしまう
任意売却をしても借入金の返済が残ってしまう場合には、売却後もその支払いをしていかなければいけません。
なお任意売却をした後、残債が残ったとしても抵当権に関しては抹消されます。任意売却の場合には、一括返済をしなくてもよく分割での支払いができます。
交渉が成立しなければ競売にかけられる恐れがある
もし任意売却の手続きが進んだとしても、最終的には買主が見つからなければ元も子もありません。
任意売却は自由市場での取引が可能になるため、競売よりかは高値で売却ができる可能性があります。
しかし買主が見つからない、見つかったとしても債権者との合意が得られない場合には売却できません。そうなると結局は競売しなければなりません。
一般的にローンを滞納してから10~12ヵ月程度で競売にかけられるケースが多いです。
もしなかなか任意売却が進まずに競売のリミットが差し迫ってくると売り急いでしまい、当初予定していた金額よりも低価格で売却をしてしまうといった恐れもあるため、注意しましょう。
また競売になったときには開札日の2日前までにすべての債権者から任意売却への同意を得られなければ競売を取り下げることができなくなります。
そもそも任意売却とはどういうもの?
そもそも任意売却とはどういうものなのでしょうか。
任意売却とは借入をしている金融機関である債権者の許可を得て、所有者の希望条件で一般市場において不動産を売却する手続きのことを言います。
通常不動産を売却するときには金融機関から借り入れを受けたさいに設定された抵当権を抹消しなければ引き渡しができません。抵当権を抹消するためには借入金を完済するのが条件です。
しかし任意売却は仮に借入金を完済できなくても、債権者の同意が得られれば一定条件のもと抵当権を解除してもらうことができます。
そのため、借入金を滞納していても債権者の同意が得られれば不動産を売却することが可能になります。
不動産売却においてある程度債権者が主導権を握っておこなうのも任意売却の特徴ともいえるでしょう。
買主が見つかったとしても債権者が売却金額等に納得せずに売却に同意をしなければ、売却ができなくなります。
もし任意売却を進めていても支払滞納が続き、買主が見つからない状況が続くと競売が開始されることもあります。
任意売却ができる条件とは?
任意売却を進めるには一定の条件を満たす必要があります。
条件は次の3つです。
● 債権者に任意売却の同意が得られている
● 所有者や連帯保証人から売却の同意が得られている
● 代位弁済後である
それぞれの条件について、具体的にみていきます。
債権者に任意売却の同意が得られている
債権者である金融機関が任意売却に同意していなければ手続きは進みません。
債権者の立場からしたら借入金の返済をしてくれることが任意売却の条件であり目的でもあります。そのため、不動産を売却したとしても借入金が残ってしまい、かつ債務者が売却したあとの返済が滞ってしまうようであれば任意売却に同意してくれないこともあります。
そうなれば任意売却をしたくても認められません。
所有者や連帯保証人から売却の同意が得られている
これは任意売却のケースに限りませんが、所有者や連帯保証人の同意が必要になります。
所有権の登記が一人であれば問題ありませんが、夫婦で借り入れをしていると共同名義になっています。
また登記が一人でも連帯保証人がいる場合もあります。
債権者のみならず、こういった共同所有者や連帯保証人に対しても、任意売却に至る経緯や手続きについて情報を共有して同意を得られるようにしておきましょう。
代位弁済後である
代位弁済とは保証会社などの第三者が債務者に代わって返済をすることを言います。債権者である金融機関は万が一債務者が滞納した場合に備えて債務者に保証会社と保証契約を結ぶようにします。
よって滞納が発生したとき金融機関は保証会社から借入金の一括返済を受けられます。
債権者が保証会社から代位弁済を受けたあとでなければ同意を得られません。まずは代位弁済の手続きを完了させてから任意売却を進めていきましょう。
任意売却がおすすめなパターン4選
それではどんなケースであれば任意売却がおすすめなのでしょうか。
任意売却がおすすめなパターンを4つ紹介していきます。
収入の減少により住宅ローンが返済できない
何らかの理由で収入が減少してしまい、今まで支払えていた住宅ローンの返済が難しくなってしまったかた。
しばらくの間は預貯金の切り崩しで対処できるかもしれませんが、状況を打破できなければ滞納が続き競売にかけられてしまう恐れがあります。
返済が難しくなった時点で早めに弁護士や司法書士といった専門家に相談して、任意売却や債務整理に取りかかることが大切です。
資産価値が低くなってしまった
不動産もさまざまな要因で価格が下落するケースがあります。
そうなったときに資産価値よりも借入金のほうが大きくなってしまうケースも少なくありません。
早めに任意売却をすることで借入金の返済を減らして、そのあとの返済計画を明確にすることで借入金返済の負担を軽減することが可能です。
離婚などにより住宅の売却をしたい
もし離婚することになった場合には財産分与をする必要があります。ここでいう財産には不動産も含まれます。
借入金の返済が終わっていれば、そこまでトラブルにならないかもしれませんが、借入金が残っている場合には返済をしなければいけません。
返済が難しい場合には任意売却をすることで、離婚後の借入金返済の負担を軽減させられます。
また共同名義になっている場合にはお互いの同意がなければ任意売却できませんので注意してください。
競売開始決定通知書が自宅に届いた
競売開始決定通知書が手元に届いた場合にはすでに競売が始まっていることを意味します。競売されたからといって任意売却ができなくなるわけではありません。
しかしほかのケースよりも任意売却にかけられる時間は限られているため、早急に債権者や連帯保証人などと交渉を進めて手続きをする必要があります。
任意売却の流れを把握しておこう
ここでは、実際に任意売却をする際の手順を解説します。
1.任意売却に詳しい専門家や業者に依頼する
任意売却の手続きを進めるにあたって、弁護士や司法書士といった専門家に相談して段取りを決めましょう。
2.不動産による査定を受ける
不動産がいくらで売却が可能なのか、不動産会社に査定をしてもらいます。査定結果をもとに債権者との交渉にはいっていきます。
3.債権者と交渉する
債権者の同意を得られなければ任意売却の手続きを進めることはできませんから、査定結果や借入金の残債状況などを鑑みて、専門家を交えて債権者である金融機関と交渉を進めます。
4.不動産会社を通して買い手を探す(売却活動)
債権者と交渉を進めながら、買い手を探す必要もあります。自由市場で売却ができるため、不動産会社に仲介をお願いするのが一般的でしょう。
5.買い手の決定や債権者の承諾により売買契約の締結を行う
買い手が見つかったら、債権者の承諾を得る必要があります。債権者は売却金額や買い手の内容を精査してその売却に同意するかどうかを決めます。もしここで同意が得られなければ売買契約の締結をおこなえません。また債権者だけでなく、連帯保証人や共同名義人がいた場合にはそのかたの同意も必要です。
売買契約をするにあたっては、自身で準備する書類として、以下があります。
● 身分証
● 印鑑証明書
● 固定資産税納付書
● 登記識別情報
不動産会社が用意してくれるものとして、以下があります。
● 売買契約書
● 重要事項説明書
● 物件の写真や建築確認申請書の写し
● 間取り図
債権者が用意するものとして、金融消費貸借契約書があります。
必要になる書類が多いため、早めに準備して漏れがないように注意しましょう。
6.残債の整理を行う
不動産の売却が決まったら残債の整理をします。残債を今後どのように返済していくのか債権者と返済計画に基づき進めましょう。
まとめ
任意売却は競売と比較して、売主の意向を組み込んで不動産売却を進められます。もし何らかの理由で借入金の返済が難しくなってしまった場合には、早めに専門家に相談して、任意売却の手続きを進めていけるようにしましょう。
また任意売却をするためには、債権者や連帯保証人の同意が必要になります。同意を得るためには任意売却後の計画性が重要になります。
残債の返済計画など実現可能な計画を掲示できれば、関係者からの同意を得られやすくなります。
専門家や関係者と連携をしながら有利に手続きを進められるようにしましょう。