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老後に固定資産税が払えないとどうなる?払えなくなった場合の対処方法を解説

 

目次

 

家やマンションを所有する方が、必ず納税する「固定資産税」。実は、老後の支払いが困難になるケースも珍しくありません。

今回は、老後に固定資産税が払えなくなった場合にどうなるか、どのような理由で払えなくなるかなどについて解説。固定資産税が払えない場合の対処方法についても、ご紹介します。

固定資産税は永遠に支払う必要がある

固定資産税は、家屋や土地などに対してかかる地方税です。 固定資産の所有者に対してかかる税金で、所有者である限り、生涯支払う必要があります。

ただし、建物の固定資産税額は、 築年数の経過によって、最終的に20%程度まで減少します。また、建物が著しく老朽化した場合、以下の建物の定義に該当しなくなり、固定資産税の支払いが免除されます。

不動産登記規則 第百十一条

建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。

引用:e-GOV法令検索|不動産登記規則

建物が老朽化し、屋根や壁がなくなった場合などは、建物の定義に該当しなくなる一方、居住できる状態の家屋であれば、固定資産税を支払い続けなければなりません。

固定資産税は年金暮らしでもかかる

固定資産税は「年金暮らしとなり、以前より収入が減った」という理由だけで、免除されることはありません。 例年1月1日の時点で固定資産課税台帳に登録されている固定資産の所有者であれば、変わらずに支払いの義務が生じます。

ただし、災害によって建物に被害を受けた方・ 生活保護を受ける方・特定の条件を満たす生活困難者の方などは、固定資産税の免除もしくは減免が適用されます。

老後にかかる固定資産税の平均額

老後にかかる固定資産税は、平均額で出すことはできません。それは、土地・建物ごとの取引価格が異なるためです。 ここでは、以下の条件を例に、戸建て・マンションそれぞれの固定資産税額の目安をご紹介します。

条件

● 戸建て(木造):3,000万円(土地部分2,000万円/建物部分1,000万円)

● マンション(鉄筋鉄骨造):3,000万円(土地部分1,000万円/建物部分2,000万円)

● 建物の面積:120平米(軽減措置により、戸建ては3年間、マンションは5年間、固定資産税が1/2に減税)

● 土地の面積 :200平米(建物含む。特例により、土地評価額が1/6に減税)

● 税率:1.4%(標準税率)

● 建築場所:東京都内

築年数別の固定資産税額の目安

築年数

戸建て

マンション

新築

11.67万円

16.33万円

5

7.87万円

14.28万円

10

11.67万円

23.04万円

15

9.85万円

19.76万円

20

8.31万円

16.48万円

25

7.61万円

13.50万円

30

7.47万円

10.89万円

35

7.47万円

8.89万円

40

7.47万円

8.17万円

※建物部分の評価額は経年減点補正率を用いて計算

上記のうち、戸建て(木造)の経年減点補正率は、築年数が27年目以降になると0.20%で変わらなくなるため、固定資産税額も変わらなくなります。

例えば上記条件のもと、40歳で家を購入した場合、65歳で会社を退職するときには築25年になっており、戸建てでは7.61万円、マンションでは約13.50万円の固定資産税がかかります。

また50歳で購入した場合、65歳で会社を退職するときにはF築15年で、戸建てでは9.85万円、マンションでは約19.76万円の固定資産税がかかります。

このように、できるだけ早く家を購入した方が、老後の固定資産税の負担は少なくなることが分かります。

固定資産税を払わないとどうなるか

老後に固定資産税を支払わなかった場合、以下のような流れを経て、自宅が公売にかけられます。

1 自治体から督促状が届く

2 延滞金を請求される

3 財産が差し押さえらえる

4 自宅を公売にかけられる

このように財産や自宅を失う恐れがあるため、固定資産税に関する「やってはいけないこと」を以下に確認しておきましょう。

【やってはいけないこと】

● 督促状を無視すること

● 状況を放置すること

督促状を無視し、滞納を続けると、状況はどんどん悪化し、選択肢が狭まります。 そのため状況を放置せず、早い段階で対策を講じることが求められます。

以上、やってはいけないことを踏まえつつ、固定資産税を支払わなかった場合の流れを、詳しく知っていきましょう。

①自治体から督促状が届く

固定資産税を払わないと、はじめに自治体から督促状が届きます。 具体的に、支払い期限より20日以内に督促状が届き、さらに滞納を続けると、催告状が送付されます。

なお、督促状の発送から10日以内に支払いがなければ、預貯金や給与などの財産が差し押さえられることが以下、地方税法にも明記されています。

法人の道府県民税に係る滞納処分 第六十八条(一部抜粋)

法人の道府県民税に係る滞納者が次の各号のいずれかに該当するときは、道府県の徴税吏員は、当該法人の道府県民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押さえなければならない。

一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る法人の道府県民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。

引用:e-GOV法令検索|地方税法

このように、督促状の発送から財産の差し押さえまでには、あまり日数がないため、速やかに対策を講じなければなりません。

②延滞金を請求される

税金は納付期限を過ぎると、当初の納付金額に加えて延滞金も請求されます。 2023年(令和5年)時点の、固定資産税の延滞金の割合は以下の通りです。

固定資産税の延滞金の割合(2023年分)

● 納期限の翌日から1か月以内・・・年2.4%

● 納期限の翌日から1か月経過後・・・年8.7%

参考:総務省|加算金、延滞金、還付加算金

法律では本来、納期限の翌日から1ヶ月以内の延滞金の割合は年7.3%、1ヶ月経過後は年14.6%です。しかし、現在は特例により、上記表の割合が適用されます。

以下表では、延滞金の計算方法を、実例とともにご紹介します。

延滞金の計算方法

例)固定資産税額:20万円

納期限:2023年10月31日

納税日:2023年12月24日

【納期限の翌日から1か月の経過日以前】

20万円 × 2.4% × 30日/365日= 394円(1円未満切り捨て)

【納期限の翌日から1か月の経過日以後】

20万円 × 8.7% × 24日/365日= 1144円(1円未満切り捨て)

【延滞金】

394円 +  1144円= 1538円

延滞金の割合は今後変更になる可能性がありますので、総務省のホームページなどを定期的にチェックすると良いでしょう。

③財産が差し押さえらえる

督促状の発送日から10日以内に適切な対応をしなかった場合、財産が差し押さえられる可能性があります。 差し押さえの対象となる財産の具体例は、以下の通りです。

差し押さえの対象になるもの

● 不動産(建物・土地など)

● 預貯金

● 給料

● 動産(現金・骨董品・貴金属・自転車など)

● 保険の解約払戻金 など

上記のうち、預貯金が差し押さえられると、銀行との取引が停止する恐れもあるためご注意ください。 なお、生活必需品や食料、事業継続に必須な物品などの差し押さえは、国税徴収法によって禁止されています。

差し押さえを回避するためには、速やかに滞納額を納付することが確実な方法ですが、払えない場合も放置せず、自治体の窓口や専門家などに相談してください。

④自宅を公売にかけられる

固定資産税の滞納額が多い、あるいは滞納が長期化しており、預金・給与の差し押さえでも支払額に届かないケースでは、不動産の差し押さえが実施されます。

なお、固定資産税のように国税徴収法に基づいて実施される財産の売却は、競売ではなく公売(こうばい)と言います。そして、家が公売にかけられた場合は退去が必要です。

自宅の公売を回避するためには、速やかに滞納額を納付することが望ましいですが、分割ではなく一括納付が必要なケースが多いと考えられます。

固定資産税が払えなくなるケース

そもそも、固定資産税が払えなくなるケースには、どのような事柄が考えられるのでしょうか。ここでは、固定資産税が払えなくなる主なケースとして、以下の2つをご紹介します。

● 年金生活になり収入が減る

● 親族から不動産を相続した

年金生活になり収入が減る

定年退職を迎え、年金生活となると、以前よりも収入が減るケースは珍しくありません。特に定年退職の前後に不動産を取得すると、ローン返済の負担で、固定資産税が払えないリスクも増す可能性があります。

対策としては、不動産取得前に資金計画を立てたり、あらかじめしっかり貯金しておくほか、状況に応じた不動産の処分も検討しましょう。

親族から不動産を相続した

親族から不動産を相続した場合、 固定資産税の支払い義務が発生します。これにより、毎年の固定資産税の負担が増えたり、相続税も合わせた負担によって、固定資産税が払えなくなるリスクもあります。

対策としては、相続の前に、発生する各種出費や毎年の固定資産税の負担を、把握しておくことが重要です。

固定資産税が払えない場合の対処方法

老後、固定資産税が払えなくなった場合は、速やかに以下のような対象を実施してください。

● 自治体の担当窓口に相談する

● 支払いを分納に変更する

● 減免制度を利用する

● 徴収猶予を受ける

● 換価の猶予を受ける

● 不動産を任意売却する

● リースバックを活用する

自治体の担当窓口に相談する

固定資産税は地方税であるため、 相談先は各自治体の担当窓口となります。固定資産税の支払いが難しい場合は、まず、 自治体の担当窓口に相談してください。

早い段階で相談しておけば、以下にご紹介する「支払いの分納」「減免制度」「徴収猶予」「徴収猶予」など、適切な対処法を提示してもらえる可能性があるためです。なお、自治体の担当窓口は納付状・督促状に記載されています。

相談方法は、担当窓口への電話はもちろん、直接出向くことも可能です。

支払いを分納に変更する

固定資産税は、4回払いもしくは一括払いが基本です。しかし自治体への相談によって、各月払いが認められるケースがあります。

これにより1回の支払額が減る一方、納付期限を過ぎた場合は延滞金が発生し、督促状が届く可能性があります。

減免制度を利用する

固定資産税の分納・徴収猶予は、 最終的に支払うべき税額は変わりません。一方、減免制度では、固定資産税の軽減・免除により、支払うべき税額が軽減されます。

ただし、減免制度の理由には、特定の条件を満たす必要があります。以下、東京都町田市を例に、固定資産税の主な減免事由をご紹介します。

例)町田市における固定資産税の主な減免事由

● 生活保護受給者の所有する固定資産

● 災害や天候の不順により著しく価値を減じた固定資産

● 火災等により甚大な被害を受けた家屋や償却資産

● 東日本大震災・原子力災害により被害を受けた土地・家屋 など

参考:町田市|固定資産税・都市計画税の減免

減免制度の要件は各自治体で異なりますが、生活保護の受給や不可抗力の事由が、減免の条件です。 なお、減免される金額は、減免事由等や個別の事情によって異なります。

徴収猶予を受ける

徴収猶予は、固定資産税の徴収が1年間猶予される制度です。以下、東京都町田市を例に、固定資産税の徴収猶予制度における該当要件・猶予の内容をご紹介します。

例)横浜市の徴収猶予を受けられる要件・猶予の内容

該当要件

● 財産について災害を受け、又は盗難にあったこと

● 納税者又はその者と生計を一にする親族などが病気にかかり又は負傷したこと

● 事業を廃止し、又は休止したこと

● 事業について著しい損失を受けたこと

● 本来の法定納期限から1年以上経過した後に、賦課決定の遅延等により納付、又は納入すべき税額が確定したこと

内容

● 1年を限度にした市税の徴収が猶予される

● 新たな督促や差押え、換価などの滞納処分が行われない

● すでに差押えを受けていれば、申請により差押えが解除される場合がある

● 徴収猶予が認められた期間中の延滞金の全部又は一部が免除される

参考:横浜市|市税の徴収猶予制度

固定資産税の徴収猶予は、最終的に支払うべき税額は変わりませんが、猶予期間中の延滞金は免除されます。 徴収猶予の該当要件は各自治体で異なるため、自治体の相談窓口で確認してください。

換価の猶予を受ける

換価の猶予は、差し押さえられた財産の売却が猶予される制度です。 以下、千葉県柏市を例に、固定資産税等の換価の猶予を受けられる要件・内容をご紹介します。

例)柏市の固定資産税等の換価の猶予を受けられる要件・内容

該当要件

以下の1から4のすべてに該当すること

● 市税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること

● 納税について誠実な意思を有すると認められること

● 猶予を受けようとする市税以外の市税の滞納がないこと

● 納付すべき市税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること

内容

● 原則として、申請の時から1年間納税が猶予される

※1年以内に完納となる毎月の分割納付が必要

※状況によって、さらに1年間猶予を受けられる場合がある

● 猶予期間中の延滞金が軽減される

※令和5年中は、年8.7%が0.9%に軽減

財産の換価(売却)が猶予される

参考:柏市|(猶予)市税「市民税、固定資産税等」

換価の猶予は、徴収猶予と同じく、猶予期間中の延滞金は免除されるケースがあります。換価の猶予を受けられる要件・内容は、やはり各自治体で異なるため、自治体の相談窓口で確認してください。

不動産を任意売却する

「支払いの分納」「減免制度」「徴収猶予」「換価の猶予」などの手段でも固定資産税が支払えない場合、あるいは将来的に固定資産税の支払いが難しくなる場合などは、不動産を任意売却する方法があります。

任意売却とは、金融機関(債権者)の許可を得て、家を一般の不動産市場で売却することです。任意売却は、公売よりも高値での売却が期待できます。 したがって、公売にかけられる前に任意売却することが望ましいでしょう。

任意売却について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

関連記事:任意売却とは?メリット・デメリットをわかりやすく紹介!条件や流れも

リースバックを活用する

売却後も家に住み続けたい場合は、 リースバックと呼ばれる方法が活用できます。リースバックは、 家の売却後に賃貸契約を結んで、住み続けることができる仕組みです。

家の売却によってまとまった資金が作れること、家の固定資産税の支払い義務がなくなることなどがメリットとなります。そのため、任意売却とともに有用な方法の1つということができるでしょう。

ただし、売却価格は市場価格より安くなりやすいこと、家の所有者でなくなること、 家賃が発生することなどは留意しておきましょう。

リースバックについて詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

関連記事:リースバックとは?デメリット・メリット・やばいといわれる理由を解説

固定資産税が払えないときは早めに相談を

家や土地をお持ちの方は、固定資産税の支払いが老後も続きます。諸事情で固定資産税の支払いが難しくなった場合は、放置せず、早めに自治体の担当窓口へ相談することが重要です。

また、固定資産税の負担を減らす手段として任意売却・リースバックが最適なケースもあります。リスタート株式会社は、弁護士・税理士と連携しており、任意売却・リースバックを含めた様々な手段をご検討頂けます。