持ち家があっても生活保護は受けられる!条件や売却が必要なケースは?
生活保護とは生活に困っている人に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行う制度です。そのため持ち家があると人は財産があるとみなされ、原則、生活保護を受給できません。
しかし要件を満たせば、持ち家があっても生活保護は受けられます。この記事では生活保護を受給できる要件や生活保護受給者が持ち家を保有できる条件、手放さなければならない条件について解説しています。
生活保護は持ち家がある場合でも受けられるか
原則、持ち家があると生活保護を受けられません。しかし所定の要件を満たせば、持ち家があっても生活保護が受給できる場合があります。実際、厚生労働省が行った2021年度の被保護者調査によると、非保護世帯の総数161万7,578世帯に対し4万6,887世帯、約3.0%が一戸建てやマンションといった持ち家で生活をしています。
参考:e-Stat政府統計の総合窓口|被保護者調査 / 令和3年度被保護者調査 / 年次調査(基礎調査、個別調査)令和3年7月末日現在 確定値
生活保護は「収入が最低生活費に満たないこと」が前提
生活保護とは、自身の資産や能力をすべて活用してもなお生活に困窮する人に対して、困窮の程度に応じた必要な保護を行う制度です。
そのため保護費は、以下の内容を実行してもなおかつ、収入が厚生労働省の定めた基準で計算される最低生活費を下回る場合に支給されます。支給される保護費は、最低生活費から収入を差し引いた差額となります。
l 資産の活用
預貯金や活用されていない土地・家屋があれば売却等で生活費に充てる
l 能力の活用
働ける人は、その能力に応じて働く
l あらゆるものの活用
年金や手当など他の制度で給付が受けられるときは、それを優先的に活用する
l 扶養義務者の扶養
親族などから扶養を受けられる人は、援助を受ける
生活保護は生活を営むうえで生じる費用として、以下の8種類の扶助が支給されます。
生活を営むうえで生じる費用 |
扶助の種類 |
支給額 |
日常生活に必要な費用 (食費・被服費・光熱費等) |
生活扶助 |
基準額は、 (1)食費等の個人的費用 (2)光熱水費等の世帯共通費用 を合算して算出 特定の世帯には加算あり(母子加算等) |
アパート等の家賃 |
住宅扶助 |
定められた範囲内の実費 |
義務教育を受けるために必要な学用品費 |
教育扶助 |
定められた基準額 |
医療サービスの費用 |
医療扶助 |
医療機関へ直接支払い(本人負担なし) |
介護サービスの費用 |
介護扶助 |
介護事業者へ直接支払い(本人負担なし) |
出産費用 |
出産扶助 |
定められた範囲内の実費 |
就労に必要な技能の修得等にかかる費用 |
生業扶助 |
定められた範囲内の実費 |
葬祭費用 |
葬祭扶助 |
定められた範囲内の実費 |
参考:厚生労働省|生活保護制度
したがって持ち家を保有していても、収入が厚生労働省が定めた最低生活費に満たなければ生活保護の受給要件に当てはまり、上記の支給を受けられます。
生活保護を受けていても持ち家を保有できる条件
持ち家を保有しながら生活保護を受けられる主なケースを4つ紹介します。
l 持ち家を売却すると住む場所がなくなる
l 持ち家の売却代金が引っ越し費用を下回る
l 持ち家の住宅ローンが完済している
l 持ち家の持ち主が賃貸物件の入居条件を満たしていないため、賃貸物件に住めない
所有している家屋を活用していないのであれば、売却をしなければ生活保護は受けられません。しかし自分が住むための持ち家を売却すると住む場所を失ってしまう場合は、生活保護を受給できます。
では引っ越し代よりも、持ち家の売却代金のほうが安いと生活保護として認められるのはなぜでしょうか。
これは通常引っ越し代金は住宅扶助として支給されますが、持ち家の売却代金のほうが安ければ、そちらを認めることで住宅扶助を支給しなくて済むからです。
また住宅ローンを完済していない持ち家の所有者も、生活保護は受給できません。なぜなら生活保護を受給した人が、仮にそのお金を住宅ローンを返済に充ててしまうと、実質、国が資産形成の手助けをしていることになり、自身の収入から住宅ローンを返済している人との間に不公平が生じるからです。逆に持ち家の住宅ローンを完済していれば、生活保護を受けられます。
収入や信用情報など、何らかの理由で他の賃貸物件に入居できない人は、持ち家がなければ住むところがなくなるため、生活保護を受けながら持ち家の所有が認められます。
生活保護受給者が持ち家の売却を求められるケース
生活保護を受給するにあたり、以下のケースに該当すると持ち家の売却を求められる可能性があります。
* 住宅が別にあり、持ち家に住んでいない
* 資産価値が2,000万円を超える
* 住宅ローン残債が300万円を超える
それぞれ詳しく解説します。
住宅が別にあり、持ち家に住んでいない
主に持ち家に住んでいて、実家を相続したケースなどが挙げられます。
持ち家を売却したら他に住むところがなくなるのであれば、持ち家があっても生活保護を受けられます。しかし住んでいない住宅もある場合は、まずそちらの資産を売却しなければ生活保護は受け取れません。すでに持ち家を保有しながら生活保護を受給している場合、相続で実家を相続すると保護費が打ち切られる可能性があります。
ただし立地が悪い築年数が古いなどの理由でなかなか売れない場合は、生活保護が認められる場合もあるため、困ったら最寄りの福祉事務所に相談してみましょう。
資産価値が2,000万円を超える
保有している持ち家の資産価値が概ね2,000万円を超えている人が生活保護を受けようとすると、持ち家の売却を求められます。これは、それだけの資産価値がある持ち家なら、売却することで新たな住居を確保し、生活費もまかなえると判断されるためです。
ただし2,000万円はあくまでも厚生労働省の指針であり、各自治体によって基準額が異なるため、こちらも最寄りの福祉事務所に相談してみましょう。
また65歳以上の高齢者であれば、不動産担保型生活資金を利用することで融資受ければ、生活保護を受けなくても生活資金を調達できます。不動産担保型生活資金とは、持ち家を担保に生活資金の融資が受けられる制度です。最寄りの地区の社会福祉協議会で取り扱っています。
その他4LDKの家に一人住まいなど、同居人数と住居の規模が釣り合わない場合も売却を求められる場合があります。
住宅ローン残債が300万円を超える
持ち家の住宅ローンが残っていても残高が300万円以下であれば、持ち家の売却を求められることなく、生活保護の受給が認められる場合があります。
しかし住宅ローンの残債が300万円を超えている場合は、生活保護が受給できません。
ただし失業や病気などで、持ち家の住宅ローンの返済の繰り延べが認められている期間中は、生活保護の受給が認められる場合があります。また金利のみ認められる場合もあるので、相談してみましょう。
生活保護受給者が持ち家を売るなら任意売却を検討
生活保護は、持ち家の住宅ローンの残債が残っていると原則受給できません。収入が厳しくて住宅ローンの返済もできないうえ、残債があるので生活保護も利用できない。そんなときは任意売却を検討して見ましょう。
任意売却とは金融機関の了承を得たうえで持ち家を売却する方法です。一般的に競売よりも高く売れるため、より多くの金額を残債に充てることができます。持ち家を売却して引っ越しをする際も、競売のように強制退去を求められることはなく、金融機関と購入者との話し合いで都合の良い日を決められるメリットもあります。
ただし任意売却をするには、金融機関や役所などとの話し合うためのノウハウが必要です。生活保護を受けるために持ち家の任意売却をするときは、リスタート株式会社まで気軽にご相談ください。